日本有数の水揚げ量を誇る焼津漁港を全国のモデルとして、漁港の津波対策を検討する取り組みが始まる。粘り強い防波堤や新形式の水門などの津波減災効果を確認しながら漁港の津波対策の在り方を検討するため、国(水産庁)が有識者による検討会を3月中に立ち上げることが分かった。被災すれば全国の水産流通に大きな影響を及ぼすことが想定されるため、津波による被害を最小限に抑えるためのハード整備の在り方と、BCP(事業継続計画)の策定について検討する。1日に開かれた静岡県議会2月定例会で川勝平太知事が明らかにした。
特定第3種漁港である焼津漁港ではこれまで、背後地を守るための胸壁や陸閘(りくこう)、津波防災ステーションなどの海岸保全施設と、漁港内で働く人の命を守るための津波避難タワーや命山(いのちやま)など津波避難施設の整備を県が進めてきた。
しかし、東日本大震災では、漁港内の冷蔵庫などの漁港施設や、漁船が甚大な被害を受け、市場機能が停止。水産物の流通に大きな影響を及ぼしたため、人命だけでなく、漁港施設の防災・減災対策が課題となっている。
そこで、津波により焼津漁港の水産流通機能が失われないよう、国が主体となって津波減災対策の検討を行うことにした。
設置されるのは、「大規模な津波に対する流通施設の避難・減災機能のあり方検討の進め方」に関する有識者会議。水産物の流通機能を確保するためのBCP策定とともに、水門や防潮堤の整備など津波被害を抑えるための施設整備の在り方などを検討し、9月中をめどに報告をまとめる。
川勝知事は、焼津漁港への水門整備の必要性を訴えた塚本大氏(自民改革会議)に対し、「焼津市や国と連携し、水門整備を含めた焼津漁港の総合的な津波対策の検討を進め、災害に強く安全な漁港整備に努めていく」と答弁した。
県では、焼津漁港の将来像とそれを実現するための具体策を盛り込んだマスタープランの中で、「津波の進入を港口で遮断する水門方式の施設整備を進められるよう国に働き掛ける」と水門設置による津波対策を中長期的に位置付けている。ただ、外洋に面した区域への水門の設置については、既存の防波堤間に整備することを想定すると規模が極めて大きく巨額の事業費が見込まれるため、今後の技術開発の進展や、東日本大震災を受けた技術指針の見直しの動きなどを踏まえて検討する方針を示していた。
(2013/3/4)
建通新聞社 静岡支社