国土交通省名古屋港湾空港技術調査事務所は、南海トラフ巨大地震などの大規模な地震による津波を想定し、被災後に航路を確保して港湾機能を復旧するための方策検討を開始した。伊勢湾内を対象に、津波襲来時の漂流物や海底土砂の挙動をシミュレートした上で、啓開が比較的容易にできる航路を選定し、啓開手法などを調べる。3月に検討結果をまとめ、各港湾などで今後に業務継続計画(BCP)を策定する際の参考などに利用する。並行して、今回得られたデータは2013年度以降も引き続き精査していく方針だ。
中部地整が中心となって12年に策定した中部圏地震防災基本戦略には、大規模地震発生時の港湾の防災対策として、伊勢湾全体での航路啓開「くまで作戦」を含む港湾機能の確保・復旧作業を盛り込んだ。漂流物などに対する航路啓開は、海路からの応急支援物資の受け取りや、貿易などの経済活動の再開に際して、最初に必要な作業として位置付けられる。「くまで作戦」では、伊良湖水道から三河港・衣浦港・名古屋港・四日市港などの耐震岸壁まで、くまで状に航路を確保するとしている。
東日本大震災では、津波により発生したがれきなどが海上を漂流し、船舶の航行が困難になった。中部地整は、漂流物の挙動や、津波による海底地形の変動のシミュレーションを行い、国が啓開作業を行うことができる水域を抽出する。また、比較的漂流物や土砂の移動が少ない水域など、船舶が災害時に避泊できる水域も探す。
検討に際して、漂流計算や土砂移動計算、啓開方策検討などを簡易公募型プロポーザル方式で沿岸技術研究センター(東京都千代田区)に委託した。
津波襲来時に想定される漂流物としては、臨海部に置かれたコンテナや自動車、貯木場の木材などがある。また、津波により海底の土砂が洗掘されたり、盛り上がることも考えられ、船舶の航行に必要な水深が確保できなくなる可能性もある。こうした漂流物の広がる範囲や量、堆積する場所、海底地形の変動などを計算する。
航路啓開などの応急対策業務について、中部地整は一般社団法人日本埋立浚渫協会などと支援協定を結んでいる。今回の検討を踏まえて、航路啓開作業の在り方を精査していく方針だ。
提供:建通新聞社