静岡県は、今後の津波対策手法の一つとして、既存の防災林や砂丘などの嵩上げ・補強によって安全度を高める「静岡モデル」を検討する。砂丘背後に広がる防災林を活用することで、地元の合意を得やすく効果的に事業を進めることを狙う。11月30日に開いた県防災・原子力学術会議の第2回津波対策分科会(分科会会長・今村文彦東北大学教授)の中で、県当局が津波対策の整備方針案として示した。
今回の会合で県は、遠州灘と駿河湾を対象に実施した津波シミュレーション(試算)の結果と、それを踏まえた地域海岸の設定の考え方、県の津波対策の整備方針案を説明した。
東海・東南海・南海3連動地震を外力とし、内閣府モデルを用いて実施した津波シミュレーションの結果では、遠州灘で「天竜川・菊川付近」、志太榛原で「吉田漁港付近」、静岡で「安倍川付近」を境に、それぞれ津波高に高低差が生じていた。御前崎では、太平洋側、駿河湾側ともに津波高が同じように高かった。
この結果を踏まえ、地域海岸の設定に当たり、津波高や津波の進行方向に影響を及ぼす海域地形の変化と、背後の土地利用や地形の状況を考慮していくこととした。
津波対策の整備方針案の中で示した「静岡モデル」は、施設高の確保や施設の耐震性の確保、居住地域の地盤の嵩上げ、命山(いのちやま)や避難タワーの設置などといった取り組みと併せて検討する。
地形的な条件や地域の合意などの条件が整った地域で検討を進めることとしており、浜松市沿岸域で事業化する考え。砂丘の背後(保安林区域)にある防災林を嵩上げし、植栽することで、津波に対する安全度を高めつつ、景観や通常時の利用などに配慮する。
(2012/12/3)
建通新聞社 静岡支社