建通新聞社
2012/11/26
【大阪】西大阪の三大水門 東南海・南海地震で開閉できない恐れ 耐震補強は無理 浮上式防波堤などの検討も
大阪府都市整備部は、21日の大阪府河川構造物等審議会(会長・戸田圭一京都大学大学院工学研究科教授)で、西大阪地区の三大水門について、東南海・南海地震発生時に水門が開閉できない恐れがあるが、現在のところ、耐震性能を確保する補強方法が見当たらない状況であることを報告。当面できる限りの耐震補強を施すとともに、避難誘導などソフト面を総合して、津波対策を進める。加えて、将来的な新津波防御システムを検討。浮上式防波堤、津波用水門の建設などを視野に入れるとしている。
大阪都心部を範囲とする西大阪地区の津波対策については、これまで「西大阪地区の津波対策に関する技術検討委員会」で検証を進めてきた。今後は、河川構造物等審議会に検証・検討の場を移し、本年度末に一定の方向性をまとめる。
三大水門は、安治川水門(大阪市港区弁天6ノ3ノ13)、尻無川水門(大阪市大正区泉尾7ノ5ノ30)、木津川水門(大阪市大正区三軒家東3ノ6ノ7)で、西大阪地区の津波・高潮対策における最重要施設。1970年に同時完成した。主水門と副水門で構成する。
これまでの調査・検証で、東南海・南海地震が発生した場合、主水門と副水門の各部位で「水門が確実に開閉操作できる」耐震性を持つのはごく一部。全体として、水門が開閉できない恐れがある。ただし、施設の崩壊による二次災害は主水門でほぼ防ぐことができる見込み(副水門は崩壊の可能性あり)。
このため、部位ごとに耐震補強の方策を検討したが、主水門では補強しても必要な強度が足りない、部位の単独取り換えはできないなどの要因で、補強により耐震性を確保できる可能性は薄い(副水門は可能)。
このため、当面の施設改修は、部分的なものにとどめ、津波避難ビルへの誘導などソフト面を総合した対策で、人命の安全性確保を進めることになりそうだ。審議会委員からも、「壊れないのが重要で、開かなくても仕方ない」などの意見があった。
将来的な新津波防御システムの検討では、津波来襲などの異常時にだけ水底から上部鋼管が浮上し、防波堤の役割を果たす「浮上式防波堤」、津波を防ぐ目的で建設する「津波用水門」、防潮堤の嵩上げなどについて、実現可能性を検証する。