第59回建設業協会東海4県ブロック会議が10月30日、三重県四日市市内のホテルで開かれ、愛知・岐阜・三重・静岡の各県建設業協会と国土交通省の幹部が、地域防災や建設産業の育成をめぐって意見を交わした。災害時の対応など地域における建設業の重要性を共通認識として確認した上で、経営の持続と健全化に向けた課題として、入札のダンピング対策や労務単価のアップ、若年入職者の確保などを中心に議論した。
会議のスタートにあたり、開催県となった三重県建設業協会の山下晃会長があいさつし、建設投資の減少などを背景に建設業が厳しい経営環境におかれていることを強調。一方、「社会資本の維持や地域の防災、雇用の確保は建設業の務めだ」と述べ、役割の重要性を訴えた。
そして、同協会の竹上亀代司常任理事が提案議題として、経営の疲弊や就業者の賃金低下につながっている問題である入札でのダンピングへの対策強化の必要性を指摘した。さらに、会員企業を対象に2010年度に行った調査結果に基づき、「現行の最低制限価格や調査基準価格で落札した場合、工事原価は賄うことができても、企業が健全な経営を行うために必要な一般管理費は不足する」と説明した。同調査では、1億円を超える工事の損益分岐点は落札率90・8%だったという。
竹上氏は「建設業のダンピング(不当廉売)は、損益分岐点を下回って入札することではないか」と話し、最低制限価格などの中央公契連(中央公共工事契約制度運用連絡協議会)モデルの算定式の見直しを国交省側に求めた。
また、公共工事労務費調査について「予定価格の上限拘束に縛られた入札制度の下では、やむなくカットした労務費が次年度の設計単価に反映され、労務単価は低減の一途をたどっている」と指摘し、調査・算定方法の抜本的な改善を要望した。
静岡県建設業協会(伊藤孝会長)からはさらに、木村紘一理事が同県内の設計労務単価の推移を説明。主要11職種の平均で、ピーク時の1997年に2万3282円だったものが、2012年度には37%減の1万4723円になっていることを伝えた。そして「ほかの産業に負けない賃金の確保が、今後の人材確保に不可欠」と強調した。
また、「依然として予定価格の事前公表を行っている自治体もある」と指摘し、低入札価格調査基準価格と市町村の入札制度の「さらなる改善」を求めた。
岐阜県建設業協会(小川弘会長)からは、前田重宏副会長が発言。「ここ数年の設計労務単価の下落は他産業との賃金格差や若者の建設業離れの要因となり、将来の建設産業に与える影響は計り知れない」と懸念。労務費調査の見直しとして、建設業の実態に合わせた職種区分の削減と多能工の採用などを提案した。
一方、愛知県建設業協会は、増永防夫会長が南海トラフ巨大地震の発生をにらみ、緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化促進を提案した。増永氏は、都市部が巨大地震に襲われた際に緊急輸送路をふさぐ倒壊建築物への対策を急ぐ必要性を指摘。「耐震化は実質的に民間に任され、なかなか進まない」と実態を述べ、有効な支援策などを求めた。
こういった業界からの提案に対して国交省側はまず、大臣官房技術調査課の高村裕平建設システム管理企画室長が、中央公契連モデルの見直しと、緊急輸送路の沿道建築物の耐震化について説明。現行の低入札価格調査基準価格の算定モデルが、工事の品質確保の視点で成り立っていることを話す一方、建設業の経営の健全化の視点など「幅広く提案を受け止めて対応を検討していきたい」と話した。
緊急輸送路の沿道建築物の耐震化については、現行の支援策を説明するともに、引き続き対策に取り組んでいく姿勢を示した。
また、土地・建設産業局の望月一範入札制度企画指導室長が「建設業の就業者の極端な高齢化は深刻な問題」と述べ、国交省が「担い手確保」に向けた取り組みを始めたことを説明。さらに労務単価の問題について、「まず実効あるダンピング対策を行い、下請けへのしわ寄せを無くしていきたい」と話した。
提供:建通新聞社