国土交通省中部地方整備局港湾空港部は、29日に開いた第4回防波堤耐津波性能評価検討委員会で、名古屋港外港地区防波堤(高潮防波堤)と静岡県御前崎市の御前崎港女岩地区防波堤(西)の補強について、工法に関する方針を固めた。高潮防波堤では主に堤防の嵩上げとケーソンの中詰め材の改良などを行う。女岩地区防波堤は被覆石や根固めブロックなどで補強する。
初弾工事は第4四半期に発注を予定しており、2012年度中の契約を目指す。工事の完了は、現在のところ2014年度を目標にしている。
高潮防波堤の補強工法では、堤防の嵩上げとケーソンの中詰め材の改良、根固めブロックの設置を選定した。工法の選定に際しては、地震により堤防が沈下した後も、高潮を低減できる天端高を確保することに重点を置いた。これにより、想定される最大規模の地震である「L2地震」に対しても倒壊・越流を防止できるとしている。
女岩地区防波堤は、堤防の港内・港外側に被覆石、港外側に根固めブロックなどを設置する。同防波堤については、地震後も船舶が接岸できるように、港内静穏度の確保を重視。発生頻度の高い「L1地震」によるものを超える津波に対しても、堤体が倒壊しない「粘り強い」構造を基本に据えた。同港では、L2津波に対応した防波堤を整備すると施工コストが跳ね上がるため、コストに対して得られる耐津波性能が最大となるように、目標とする津波レベルはL1の1・7倍を設定した。
港湾空港部は、委員会と並行して防波堤の設計を行っており、工事発注までに詳細を詰める。二つの防波堤の基本設計は日本港湾コンサルタント(名古屋市中区)が担当しており、今回選定した工法に基づいて設計を進める。高潮防波堤の詳細設計はドラムエンジニアリング(東京都千代田区)が担当、施工時の安全対策などを検討している。
高潮防波堤は、弥富市側の鍋田堤(延長4126b)と知多市側の知多堤(同1331b)、両堤の間でポートアイランド付近にある中央堤(同2136b)で構成している。
嵩上げ高などは場所により異なるが、いずれも名古屋港基準面(NP)に対して天端高8bを確保する。想定される地盤沈下はいずれの堤防も約3・5bとなっており、NP4・2b〜4・5bの最大津波水位に対して越流を防ぐ高さを保つ。
ケーソンの改良では、内部の砂利・石を抜き取り、セメントと混和して充填(じゅうてん)する手法を採る。今回の委員会に先立つ検討で、嵩上げの工事費は概算で1b当たり56万円となった。今後、ケーソンの改良も含め、より正確な施工費を算定する。
女岩地区防波堤は延長870b。被覆石の設置量などは場所により異なるが、堤防中央部に近いC工区の場合、港外側に1個1・2d以上の被覆石を、港内側に1個2・5d以上の被覆石を設置する。さらに港内側には、越流を想定して根固めブロックや洗掘防止マットなどを新設する。
提供:建通新聞社