岐阜県は、県管理道路を安全・安心で持続的に利用できるようにするため、従来の予防保全型の維持管理に加え、道路利用者からの視点を取り入れ、施設破損による社会的影響を数値化したリスク評価を加えるなどした維持管理手法「社会資本メンテナンスプラン」を策定した。
現在、各土木事務所で同プランに基づく道路維持を試行するモデル路線の選定を進めている。設定したモデル路線で年度内かけて試行を進め、問題点などの検証を行う。検証結果を元に修正を加えたうえで2013年度からは全県下で本格運用を図る。
対象施設は、投資額が多く、社会的な影響のある施設として「舗装」「橋梁」「危険斜面(落石)」の3施設としている。リスクは、各道路施設に起こり得る、舗装に穴ぼこが発生するとか橋梁の部材が破損、危険箇所から落石が発生するといった問題について、その問題の発生する確率と問題が与える事故などの各種の社会的影響の大きさの積とする。社会的影響の評価項目としては@道路事故によって発生する物的・人的損失A救命救急患者を医療機関へ搬送する時間が増大することで生ずる人的損失B観光・産業の活動における人や物の輸送が遅れることによって生じる時間的損失C孤立集落が発生し、人の移動や物資の輸送が遅れることによって生じる時間的損失D多降雨時の通行規制に伴う時間的・物的損失E苦情を通報するために道路利用者に生じる時間的損失F事後対策工事が必要となった場合に発生する工事費用G事後対策工事が必要となった場合に発生する渋滞・迂回損失−の道路利用者の目線を主体とした8項目。
補修順序の設定は、施設ごとにリスクを算出した後、道路の一定区間ごとに集計し、区間ごとのリスク値が最も大きな区間を算定する。次にその区間の中でB/Cの最も高い施設から補修を行う。
リスク評価は、全307路線の県管理道路合計4175`を1914の区間に分けて実施する。実際に運用する際には、管理履歴のデータなどを反映させ、社会的影響額の修正を毎年行い、データの品質を常に確保していくことが重要となる。
県は、膨大な量の県管理道路施設を保有する一方で、厳しさを増していく財政状況により道路維持管理費の増加は見込めないこと、技術者の減少や組織のスリム化による職員の減少、建設後50年以上経過する橋梁が現在は736橋と全体の約17%だが20年後には2420橋となり全体の約56%を占めることになるなどの課題があり、これに対処するには施設の機能や特性に合った効率的で効果的な維持管理が必要とされていた。
県は同プランを策定するため、10年度に「社会資本メンテナンスプラン検討委員会」(委員長・森本博昭岐阜大学名誉教授)を設置し、検討を進めて11年度末には社会資本メンテナンスプラン行動方針(案)を取りまとめ、12年6月にパブリックコメントを実施した。8、9月に寄せられた意見を参考にプランの見直しを行い、策定を完了させた。他県では社会的影響の視点を取り入れた維持管理を行っているところはなく、道路利用者の視点を取り入れた岐阜県発信の新たな取り組み。
提供:建通新聞社