愛知県水道用水供給事業の進め方に関する研究会(委員長・松尾直規中部大学工学部教授)が10日、名古屋市内で開かれ、今後の地震防災対策、老朽化施設の更新などに対する取り組みについて意見をまとめた。津波対策を考慮した水道施設の耐震化や老朽化施設の更新手法、再生可能エネルギーの導入について検討することを盛り込んだ。
愛知県企業庁は、2007年3月に厚生労働大臣から水道用水供給事業の事業認可を受けた。認可後5年が経過したことから、学識経験者で構成する研究会に対し、現在実施している事業について意見を求めた。評価結果は9月に発表する。
検討された議題は、「施設整備」「水質管理」「維持管理など」の3項目。
施設整備では、東日本大震災における水道施設の被災状況を踏まえて議論を進めた。研究会は、今後予想される東海・東南海・南海地震などが発生した場合でも水道用水を安定して供給できるように、現在建設中の連絡管と広域調整池の早期運用▽非常時の電力確保を目的とした自家発電設備の早期整備▽浄水場施設の早期耐震化▽津波対策を考慮した水道施設の耐震化と耐水化の検討−を求めた。
企業庁の地震防災対策実施計画は、震災後1週間以内に応急給水を開始し、2週間で平常給水に復旧すると定めている。緊急時に県営水道を市町村水道に直接送水する支援連絡管や応急給水支援設備、供用備蓄倉庫の整備は完了している。一方、緊急貯水槽の役割を担う広域調整池は、全体計画25池のうち14池が完成した。現在6池の整備を進めており、5池が未着手だ。浄水場や広域調整池などの水道供給拠点を連絡する連絡管は、全体計画97`のうち74`が完成。基幹管路にもう1本のバイパスを整備する「管網化」は、全体計画45`のうち28`が完成した。いずれも現在着手している事業は17年度までに完成させる考えだ。
浄水場などにある池状の土木構造物は、21年度までに全て耐震化する。工事期間中の水道供給を確保するため、前後期に分けて工事を進める方針。
東日本大震災では、施設自体は無事でも、電力が確保できないため稼働することができない施設もあった。これを受け企業庁は、自家発電設備が未設置となっている特別高圧受電の浄水場にも自家発電設備を早期整備する。臨海部の水管橋は地中に埋めるなど、津波対策を含めた耐震対策を検討する。
このほか、老朽化施設の更新についても意見が交わされた。浄水場の電気・計装・機械設備は、これまで企業庁が蓄積してきたデータを基に、適切な点検・補修を行い、施設更新費用を平準化する。導送水管路は、法定耐用年数を超過する管路が年々増加することから、管路更新実施計画を早期に策定し、更新を実施する。
浄水場の土木構造物は今後、更新時期を迎えるため、施設の長寿命化を図るとともに、効率的な水運用や施設配置を考慮した更新手法を検討する。
水道施設の維持管理は、経験豊富な技術職員が今後大量に退職するため、受水団体と連携して人材育成と技術継承に取り組む。また水道事業の安全性と採算性に配慮しつつ、小水力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーの導入について検討する。
提供:建通新聞社