北海道建設新聞社
2012/07/09
【北海道】ICTで産業活性化を−道総合通信局らが研究発表会開く
北海道総合通信局、テレコムサービス協会北海道支部、電子情報通信学会北海道支部の2012年度情報通信研究開発発表会がこのほど、札幌市内で開かれ、ICTを活用し、地場産業の振興や地域住民の生活向上に貢献する研究成果が紹介された。発表はICTによる水産業支援、スマートフォンを使った登山道での観光・防災対策モデル、寒冷地でのヒートポンプ暖房など5テーマ。新世代通信網テストベッド(JGN―X)や公共ブロードバンドの現況も示された。
各研究は「戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)」を用いて展開している。
公立はこだて未来大は「小型漁船群による海洋センシングとユビキタス漁業支援に関する研究開発」について発表。漁業者が主体となった資源管理型漁業への移行を目指し、リアルタイムで水産資源量を分析できる海洋センシング技術や、ユビキタス漁業支援技術の中間成果を説明した。
第3世代と呼ばれるモバイルネットワークの3G、クラウドサーバー、センサーネットワーク、仮想潮流計などで、現況のデータ収集と、漁業者間の情報共有化を促進。ユビキタス化に向け、デジタル漁業日誌と資源評価アルゴリズムを開発した。
漁業者がタブレット型パソコンで簡単に漁獲密度や海洋情報などを把握できる。群れセンシングによる情報の可視化で、漁獲可能量や漁期などの決定指標、安定操業、安定経営などを促す。
釧路根室圏産業技術振興センター、釧路工専は「山岳地域(登山道)におけるAR(拡張現実)を用いたスマートフォンフル活用のためのGPS・Wi―Fi通信環境の研究開発」を報告した。
スマートフォンなどのアプリケーションに代表されるAR技術を活用したほか、太陽電池パネルからの電源供給で長距離無線LANネットワークを構築。準天頂衛生「みちびき」からの高精度測位情報を利用し、山岳・登山道での自然環境をモニタリングした上で、観光振興や環境・防災対策のモデルとする。
共有化する情報は、自然歩道の付近の温度、湿度、視界、各情報の取得場所・時間などで、データはネットワーク内に設置したサーバーで数分間隔で蓄積できる。山間部では各要所ごと、自然舗道では一定間隔でアクセスポイントを設け、センサー類を200―300mおきに置く。雌阿寒岳で実証した結果、登山道中腹までの樹林帯では、数百m間隔での通信を確認できた。
旭川高専は、工学院大、コンピュータービジネス(本社・旭川)、北総研と連携した「寒冷地におけるヒートポンプ暖房制御システムの研究開発」を紹介した。
太陽光が降り注ぐ昼間、エアコン暖房のオーバーヒート(暖め過ぎ)を防ぐ、ICTによる制御システムで、情報収集、表示端末としてセンサー用マイコン、暖房制御用マイコンを開発したほか、データー集約サーバを構築。さらに気温情報の収集や予測技術の開発に向け、地域性を反映した手法や外気温予測手法を検討し、各家庭での目標パターン適応処理技術を作る。
12年度には、これまで開発した各種センサーやモジュールの組み合わせを研究。センサーとセンサー用マイコンの通信は無線化し、設置の自由性を高める考えだ。また暖房制御精度の評価方法を確立し、その評価も課題とする。