農林水産省東海農政局は、農業水利施設を対象とした小水力発電施設の導入に向けて、新濃尾地区(愛知県北部、岐阜県南部)と矢作川用水地区(愛知県中央部)を、新たに設置可能性の調査対象に追加した。今後、管内の他地区でも事業化の可能性を探るため、候補地を選定していく。
新濃尾農地防災二期地区は、宮田導水路(愛知県扶桑町〜江南市)が設置検討の対象となる。同水路は現在、国営総合農地防災事業としてコンクリート水路の整備を進めており、発電施設を設置すると決まった場合、既存事業に組み込むための調整が必要になる。
矢作川用水地区は、岡崎市や西尾市など、事業区域全体で調査を進め、整備の可能性を探る。同地区は、かんがい排水事業として老朽化対策を11年度に完了している。
さらに、矢作川用水地区では、羽布ダムを対象に、落差の大きい放流部で設置を検討している。
両地区での小水力発電の導入の検討に際しては、ダムの放流部や水路の分水工など、場所に応じて流水量や落差を調査し、予測される発電量を割り出す。発電施設は、1000`hを中心にさまざまな規模を検討する。その後、順調に進めば、有望な地点を対象に設置設計を委託する。
発電した電力は、売電するほか、既存農業水利施設の使用分に充てる案などが出ている。今後、エネルギー行政の動向を見て、電力の価格から事業化できるかを判断する。経済産業省は、再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度の枠内で、現在のところ中小水力の買取価格を1`h当たり25・20円(買取区分1000`〜3万`h)〜同35・70円(同200`h未満)としている。
同局はこれまでのところ、西濃用水地区(岐阜県南西部)で2012年度内に、発電施設の設置設計に入る方針を打ち出している。
同地区では、12年度中に小水力発電施設の実施設計を委託するため、早ければ6月中にも一般競争入札を公告する。設置場所は、揖西・西部幹線水路へとつながる分水工部分を予定している。
提供:建通新聞社