静岡県建築士会(西山昌行会長)は、「県民と協働する歴史まちづくりの専門家育成」として、歴史的建造物を保全・活用するための新たな取り組みを始める。専門知識を持つ建築士として県建築士会が認定する「地域文化財専門家」の育成を進めながら、地域文化財専門家と建設会社や専門工事業者などで構成する「静岡県ヘリテージセンター」(SHEC)を設立。歴史的建造物の保全・活用や修繕・改修などの相談を住民(建物所有者)や行政から受け付けるとともに、災害など非常時に被災した建造物の危険度調査や修復・改修に関する助言・指導などを行う。
県建築士会ではこれまで、県内にある旧東海道の22宿の基礎調査を行い、歴史財を活用したまちづくりの提案などを行ってきた。2008年度からは、建築士を対象とした歴史的建造物の保存・活用に関する専門的な研修を実施し、これを修了した建築士を「地域文化財専門家」として認定。これまでに122人の専門家が誕生している。
こうした取り組みを踏まえ、歴史的建造物を適切に維持保全しながら、旧東海道の歴史や文化を生かした街並みや景観づくりを進めるため、新たな取り組みを始める。
具体的な取り組みの内容は、▽地域文化財専門家の育成▽旧東海道地域の歴史文化資源の把握▽職人など人材の把握調査▽SHECの設立・運営▽県民・行政・専門家のネットワークの構築―。
地域文化財専門家については、引き続き研修を実施して毎年度20〜30人を養成。研修を修了した専門家向けのステップアップ研修や、専門家同士のネットワークの構築を進める。
歴史文化資源の把握として、過去に実施した歴史的建造物や民家、蔵などの調査の追跡調査を行ってリスト化、データベース化する。所有者に対するヒアリングも行い、維持保全に関する課題を抽出する。
人材の把握調査では、歴史的建造物の修繕や維持保全を適切に行うことができる大工や左官、建具などの職人がどの程度いるのか把握する。
その上で、県建築士会(ブロック事務局)に、地域文化財専門家と、設計事務所や建設会社、工務店、専門工事業者などで組織するSHECを設立。建物所有者や行政からの相談を受け付けるほか、地震など災害発生時に被災した建造物の危険度調査や修復・改修に関する助言・指導を行う。
さらに、行政の文化財(教育部門)と景観、建築の各担当部署と「歴史的建造物保全・活用協議会」を設置。法律や税制、財政措置などさまざまな課題や、通常時・非常時の対応を協議していく。
今回の取り組みは、国土交通省の「歴史的風致維持向上推進等調査」の対象となっている。
(2012/5/25)
建通新聞社 静岡支社