北海道建設新聞社
2012/04/17
【北海道】橋梁の生涯コスト最適化へ一元管理システム−札幌建協が研究会
札幌市街を縦断する豊平川に架かる橋梁の維持・架け換えについて研究してきた札幌建設業協会(岩田圭剛会長)は、「橋梁トータル・マネジメント・システム」を考案した。発注者の行政と建設会社、建設コンサルタントが協議体(コンソーシアム)の設立で連携を図り、役割を分担しながら、橋梁の点検マニュアルや補修マニュアルを確立する。実現すると道内の先行型モデルとなり、他市町村への普及が期待される。近く関係者で自主研究会を設置し、本格的な検討を始める。
「橋梁トータル・マネジメント・システム」は、公共事業の創出を検討する同建協が、2011年5月に市に提案した「豊平川サーモンビレッジ構想」に続く第2弾として構想を練ってきた。
豊平川に架かる橋梁は、国道と道道、市道の長大橋と中小橋を合わせて247橋ある。中には昭和30年代の架設が2橋、同40年代が7橋あることなどから、老朽化対策と合わせた効果的で効率的な維持更新が課題として浮上している。
そこで同建協の事業構想策定委員会(平野良弘委員長)は発注者による国道と道道、市道ごとの橋梁管理を撤廃し、ライフサイクルコストの最適化を図るため、設計施工から維持管理まで一元管理できる新しいシステムの導入を検討してきた。
PPPやPFI、指定管理者制度など公共施設の企画立案や管理運営が民間へとシフトする中、「国は全国統一の橋梁データベースを整備する動きがあり、これに応じて地域での取り組みが必要となる。作成する点検・補修マニュアルは、全道市町村への技術支援となり意義がある」(清兼盛司専務理事)と判断した。
同システムの協議体は、発注者の道路管理者と大学教授などの学識者、建設会社の施工者、建設コンサルタントの設計者での構成をイメージ。国内の先進事例としては「青森県橋梁アセットマネジメントシステム開発コンソーシアム」が知られている。
構造や耐用年数を考慮した適切な点検、補修を実施し、技術講習を行うことで、行政には技術力向上による品質確保や緊急時のスムーズな対応、発注業務の軽減などでメリットがある。民間側は、知識や資機材の共有をはじめ、協議体メンバーへの優先的発注や、実績がなくても地域JV制度の枠組みでの参加が期待できる。
しかし一方では、組織の設置運営まで時間がかかる、ボランティアで組織すれば参加企業が限られる、運営資金の確保と事業量の確保などが課題。
そこで委員会は、行政と密接に連携を図っていくためにも、先行して学識者と施工者、設計者が自主研究会を設置し、段階的な試行を進めながら最終的な協議体に移行させる方針を固めた。当面は点検手法や補修工法の確立を重点的に推進し、具体的な市町村支援を研究していく。