静岡県は2012年度、流域の浸水被害軽減に向けた沼川新放水路の建設事業を新規事業化し、地質調査や放水路の実施・構造設計、JRとの協議などを開始する。海岸侵食への影響やコスト縮減策が課題となっているため、現地調査を進めつつ放水路の構造を固めていく方針。
新放水路は、高橋川から沼川を経て駿河湾(沼津市青野〜大塚)に至る延長約2300b。高橋川分流地点から河口区間で毎秒150立方bの流量を安全に流せるよう、JR東海道線以北で開水路、JR東海道線以南でボックスカルバート(トンネル)による放水路を構築する計画。
東海道線以北の開水路区間では、用地買収を進めながら、築堤や護岸などの河川整備を行う。これまでに、JR東海道線から国道1号までの区間の用地買収を完了。開水路(掘割)部を暫定掘削し、1万5000立方bの暫定調整池として活用している。総事業費を50億円程度と試算している。
一方、東海道線以南のボックスカルバート区間では、高さ5b、幅10b程度のボックスを横に二つ並べる形でトンネルを構築。関連設備として、吐口部や開口部(ゲート)、国道1号の橋梁化、分流施設などを整備する。現段階で想定する事業費は約200億円。
12年度は、地質調査や、ボックス区間の構造などを固めるための実施・構造設計に着手。並行して用地調査やJRとの協議、JR東海道線以南の用地買収を開始する。
沼川の流域は、雨水が愛鷹南麓の急斜面を短時間に下り、山すそに広がる低地帯に至る。低地帯は海岸に沿って非常に緩い勾配となっているほか、洪水の海への出口が限られているため、浸水被害が多発している。一方、流域の市街化が進み河道の拡幅や掘削が困難で、ポンプを大きくして排水することも地形上難しい。
そこで、水害による被害の抑制に効果の大きい、高橋川から沼川を経て駿河湾に至る放水路を新設する。
「江尾江川など3河川で築堤や掘削に向けた調査や設計開始」
また、沼川新放水路の建設を含めた流域の河川整備計画(富士川水系富士山麓沼川ブロック河川整備計画)に基づき、江尾江川と小潤井川、伝法沢川の3河川で、築堤や掘削、護岸工の整備に向けた調査や設計を開始する。
江尾江川は、沼川合流点から江尾橋までの延長約1・9`で、毎秒20立方bの流量を安全に流すことを目標に、河床掘削や築堤などを整備して流下断面を確保する。
小潤井川の整備実施区間は、津田橋から伝法沢川合流点までの延長約2`。毎秒80立方bの水が安全に流下できるよう、築堤や掘削、護岸整備などを行う。
伝法沢川では、小潤井川合流点から中村橋までの延長約0・4`で、毎秒75立方bの水を流下するよう、築堤や掘削、護岸整備を行って河積を拡大する。
(2012/4/16)
建通新聞社 静岡支社