建通新聞社(東京)
2012/04/05
【神奈川】 失格者多数の治山工事 「積算で見落としの可能性」
2011年度第3回目となる「神奈川県政府調達苦情検討及び入札・契約監視委員会」(委員長、村上政博一橋大学大学院教授)がこのほど開かれ、入札に参加した11社中10社が、最低制限価格を下回って失格した「平成23年度蛇骨川上流(その2)治山工事」について、県側に経過の説明を求めた。県の担当者は、「工事には犬走りの植栽工が含まれ、その際、根巻き工の追加を条件とした。積算の参考にしてもらう県森林整備設計単価表には、花木1本当たりの単価を表しているが、根巻き工については『ポット苗または根巻きの場合、1本あたり200円増しとする』と欄外に示している。それを見落とした参加者が複数いたようだ」と説明。現在、「この単価を分かりやすく明示する方法を協議している」と述べた。
11年度第3四半期に執行された1133件の中から、条件付き一般競争入札による▽「平成23年度蛇骨川上流(その2)治山工事▽相模川流域下水道右岸処理場焼却炉改築工事(機械・電気)―の2件と、随意契約による「街頭防犯カメラ設置工事」1件の計3件を抽出。各案件の入札経過などについて審議した。
WTО対象工事である「相模川流域下水道右岸処理場焼却炉改築工事(機械・電気)」は、4社が参加の意向を示したが、事前に2社が辞退。入札当日、さらに1社が「辞退札」を入れたため、結果的に有効札を入れたのは落札者(1社)だけだった。
委員は、「応札者(参加表明者)が4社と少なく、しかも落札者の1社を残してすべて辞退したことについて、どう考えるか」とただした。
県側は、「特殊な工事であり、ある程度の技術力を必要とすることから、一定の施工実績を条件に付けた。少なくとも十数社の参加が可能とみていたが、結果的に参加者が少なく、3社が辞退するという結果になった」との経緯を説明した。その上で、「明確な辞退の理由は分からないが、予定していた専任技術者を配置できなくなった、と辞退届に記した企業もあった」と述べた。さらに、「落札率が(95%と)比較的高かった」(委員)ことに関しては、「事前にプラントメーカー8社から見積もりを徴集し、積算諸条件調書をすべて公表している。特定の会社に有利に働くことはない」と答えた。
〜参加表明17社中、16社が失格・辞退など〜
電気B・Cランクを対象とした「街頭防犯カメラ設置工事」は、参加を申し込んだ17社のうち、16社が「最低制限価格未満」や「辞退」「入札書不着」で失格・無効などとなった。1社のみが有効札だったが、予定価格を超過した。
そのため、Aランクで施工実績があった2社に参加を要請し、予定価格を超過した1社を含めた3社で見積もり合わせを行った。その結果、落札率49・2%で、見積もり合わせから参加したAランク業者が落札した。
委員は、「予定価格を見直した上で再公告する方法もあったのではないか」「随意契約に移行するにしても、Aランク企業はほかにもいたのではないか」と指摘した。
これに対して県側は、「工期が迫っており、急を要していた。実績がある業者の方が確実に施工してもらえると判断し、見積もりへの参加を依頼した」と述べた。同案件については各委員から質問が相次いだため、村上委員会が次回会合で改めて説明するよう県側に求めた。