静岡県は2012年度、農業用水を活用した小水力発電の導入促進で、大井川用水地区(島田市ほか)と大井川右岸用水地区(掛川市ほか)の2地区で概略計画の策定(概略設計)に着手するとともに、10年度に概略計画をまとめた伊達方地区(掛川市)で、事業化に向けた基本計画を策定する。並行して、行政や土地改良区、民間企業などで構成する協議会で、小水力発電導入に当たってのガイドラインをまとめる方針。
県内には受益面積が100f以上の農業用水路が延長1117`(2007年度末現在)あり、ここを年間約27億dの水が流れている。一方、小水力発電は近年、低落差・小水量でも可能な技術開発が進み、設置コストも安くなりつつある。そこで県は、農業用水を活用した小水力発電の導入を積極的に促すことで、施設の維持管理費を軽減するとともに、再生可能エネルギーの安定供給や新たな産業の創出を目指す方針を打ち出している。
12年度は、こうした施策の実現を目指し、大井川用水地区と大井川右岸用水地区の2地区で、発電計画や施設構造の検討を行って概略計画をまとめる。それぞれの用水路ごとに、電力需給計画や概算事業費、発電形式の検討などを行い、事業化の可否を判断する際の基礎資料とする。国の補助制度を活用(100%国費)し、県が業務を委託する。12年度予算で概略設計費として1400万円を計上した。
また、すでに概略計画をまとめている伊達方地区で、事業化に向けた基本計画(事業実施計画)の策定に取り組む。こちらも県が業務を発注する。
12年度予算で概略設計費などとして1400万円を計上した。
一方、3月19日に設立した「農業用水を活用した小水力等利用推進協議会」で、適正で円滑な小水力発電の導入に向けた、県独自の設置・運用に関するガイドラインをまとめていく。
小水力発電の導入に向け、県は09年度、県内27カ所の農業用水路を対象に可能性を調査。その結果、用水の施設運営に必要な電力を賄いつつ売電する出力を得られる場所があることが分かった。これを踏まえ、全国土地改良事業団体連合会が10年度に有東木地区(静岡市葵区)と大井川右岸伊達方落差工(掛川市)で概略設計をまとめたほか、県が11年度に三方原用水地区(浜松市北区)で概略設計を進めている。
(2012/3/23)
建通新聞社 静岡支社