静岡県は2012年度、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」に基づき、県内約1700カ所で土砂災害の基礎調査を実施する。航空写真を基に、がけの角度や住宅の密集度などを調べ、被害の想定を図面にまとめる作業で、各土木事務所などが区域ごとに業務を発注する。並行して、基礎調査を完了している約1500カ所で警戒区域・特別警戒区域を指定する考えだ。ハード対策と合わせて土砂災害の軽減を狙う。
同法では、土石流や地すべり、急傾斜地崩壊といった土砂災害の発生する危険性の高い地区を都道府県が指定。「イエローカード」に相当する警戒区域指定地区で、住民に危険性を周知して大雨などの際の避難体制を確立する。また、木造の家屋が倒壊する恐れがあるなど「レッドカード」に当たる特別警戒区域で、指定地区の開発に一定の歯止めを掛け、開発を行う場合に土砂災害防止のための取り組みを事業者に求める。
県内には、土石流で4247カ所、地すべりで183カ所、急傾斜で1万0763カ所の合計1万5193カ所の危険箇所がある。県では、10年度末までに、土石流で1522カ所、急傾斜で4022カ所の計5544カ所を警戒区域(うち3428カ所が特別警戒区域)に指定。11年度も順次、指定を進めており、約1500カ所(うち約1300カ所が特別警戒区域)が追加される見込み。
引き続き残る危険区域の警戒区域・特別警戒区域の指定に向け12年度、県内各市町で約1700カ所の基礎調査を実施する。また、基礎調査を完了した約1500カ所を対象に、地元市町と共に住民への説明を行った上で、警戒区域・特別警戒区域を指定する考えだ。
県では、土石流や急傾斜地崩壊を防ぐため、国庫補助事業と単独事業でハード面の事業を進めているが、県内の市街化区域の拡大と開発のスピードに追い付いていない現状がある。そこで、同法を活用し、危険な地域を周知するとともに、住宅などの新規立地の抑制や建築物の構造規制、既存住宅の移転、開発に伴う対策の実施などを促す。
(2012/3/21)
建通新聞社 静岡支社