静岡県は、公共工事入札・契約制度の2012年度の改善策を発表した。11年度にまとめた県建設産業ビジョンを踏まえ、総合評価方式の対象工事をさらに拡大するほか、企業の地域貢献活動について、実績を主体に評価項目や評価基準を追加・変更。過疎地域で、ビジネス経営体(過疎地域に本社を置く法人で、県の総合点数715点以上)を対象とした入札を試行する。適正な競争環境の整備として、20〜30者程度としている入札参加想定業者数を「20者程度」に抑えるとともに、個別の道路の小規模修繕業務や雪氷対策業務で、異常気象時の事前待機費用の負担を明確にする。
主な改善事項は、建設工事で▽総合評価方式での実施目標の拡大と、企業の地域貢献活動に関する評価項目・評価基準などの追加・変更▽ダンピング対策▽ビジネス経営体への発展支援―。
建設関連業務では、▽制限付き一般競争入札の実施目標の拡大▽総合評価方式の実施目標の拡大と、企業の能力に関する評価項目・評価基準の追加―に取り組む。
その他で、▽想定業者数の見直し▽異常気象時の待機費用の取り扱い▽現場代理人常駐義務の緩和▽低入札調査基準価格算定式の改正▽建設関連業務の低入札調査基準価格算定式の改正▽受注者・発注者間の対等性の確保―を行う。
「建設工事」
建設工事の総合評価の拡大では、設計価格1000万円以上5000万円未満での適用を増やす。11年度は対象工事の3割程度としていた目標を「5割程度」にする。5000万円以上の工事はこれまで通り原則実施する。これにより、11年度に約500件だった総合評価の工事を「700〜800件」まで増やす。
対象工事の拡大とともに、総合評価を行う際の評価項目・評価基準を見直す。災害協定に基づく活動実績や地域貢献活動の評価基準を細分化し、「発注事務所管内での活動実績」「企業単独による活動実績」などを評価。さらに、小規模・舗装道・雪氷業務の受注実績を評価項目に加える。労働福祉の状況についても内容をより細かく評価することとし、新卒者雇用や県の次世代育成支援企業の認証などを新たに評価基準にする。
ダンピング対策では、比較的規模の大きな工事での施工体制確認型総合評価方式の試行を継続。11年度に数件としていた目標を「20件程度」に増やす。
ビジネス経営体への発展支援として、ビジネス経営体を対象とした入札を試行。過疎地域での工事を、その地域に本社を置く県の総合点数715点以上の法人向けに制限付き一般競争入札で発注する。企画的業務部門の有無は参加条件としない。また、企業の合併を促すため、入札参加資格の総合点数での客観点(経営事項審査の総合評定値)の加算措置を拡大する。
「建設関連業務委託」
建設関連業務委託については、設計価格1000万円以上の比較的工夫の余地が少ない測量などで、制限付き一般競争入札を原則として実施。100万円以上1000万円未満の業務の2割程度に導入する。全体で90件程度を目標とする。
総合評価方式は、2000万円以上で原則実施し、100万円以上2000万円未満の案件の2割程度に適用する。11年度に80件だった件数を「150件程度」に拡大する。これに合わせ、これまでなかった「企業の能力に関する評価項目・評価基準」を追加。業務成績や災害協定の活動実績、ISO取得実績、企業の地理的条件、地域貢献活動を評価する。
「その他」
このほか、適正な競争のための環境整備として、入札参加の想定業者数を見直し、20〜30者程度としていたものを「20者程度」に改める。
地域の建設業者の健全な発展を目的に、個別の道路の小規模修繕業務と雪氷対策業務で、異常気象時の事前待機に関する費用負担を明確にするほか、小額工事での建設業者の負担を軽減するため、現場代理人の常駐義務を緩和。2件だった兼務可能な工事件数を「3件」にし、1件当たりの工事規模の制限を廃止する。2000万円未満だった工事請負金額の合計額を「2500万円未満」(建築一式は5000万円未満で据え置き)に増やす。
ダンピング対策では、▽測量▽建築コンサルタント▽地質調査▽農林土木関係の建設コンサルタント、補償関係コンサルタント―について、低入札調査基準価格の算定式を、国に準じて改正する。
さらに、受発注者間の対等性の確保策として、11年度中をめどに策定する「県設計変更ガイドライン」の試行を始める。
(2012/3/19)
建通新聞社 静岡支社