建通新聞社(東京)
2012/03/07
【東京】 首都高、構造物の大規模更新へ議論スタート
老朽化が進む首都高速道路の構造物の大規模更新に向けた議論が始まった。首都高速道路会社は5日、有識者らで構成する調査研究委員会(委員長・涌井史郎東京都市大学教授)の初会合を開き、経年や過酷な使用状況などを踏まえ、大規模更新の候補箇所を選定する方向性を確認した。首都高の橋本圭一郎社長は、委員会資料を一般にも公開して「大きな問題を皆さんと一緒に考えていきたい」との姿勢を強調。涌井委員長も「代替療法的な方法で機能更新してきたが、抜本的にどう考えるかを含めながら議論して、成果を答申したい」と述べ、12月の提言の取りまとめに意欲を見せた。
構造物の大規模更新の在り方は▽路線総延長約300`のうち約95%を構造物(高架橋、トンネル、半地下)が占め、約50%は開通から30年以上が経過▽一般道や他の高速道路に比べて大型車の交通量が多く、床版設計荷重(軸重10d)を超える過積載車両も通行▽計画的に補修が必要な損傷箇所が年々増加▽カーブ区間とジャンクションの分合流部で事故が多発―といった課題に対応するために検討する。
首都高は「構造物の耐用年数を延長するための対策や、場所によっては橋梁の架け替えなど大規模な更新を計画的に実施することを検討する段階に来ている」(橋本社長)として、ライフサイクルコストの観点も含め、優先的に更新する箇所や工法、費用などの考え方を委員会に提言してもらう。
提言を踏まえ、現在の償還計画でまかなえない経費の増大などが生じる場合には、国土交通省などに要望を行う構え。
初会合で首都高は、開通から40年を経過した▽都心環状線▽1号羽田線▽1号上野線▽2号目黒線▽3号渋谷線T期▽4号新宿線T期▽5号池袋線T期▽6号向島線▽7号小松川線▽横羽線―での損傷発見数が、40年未満の路線に比べ大幅に多いとのデータを提示。合わせて「東品川桟橋部」(1号羽田線)に維持管理上の課題があり、「新大橋カーブ」(6号向島線、箱崎JCT〜両国JCT間)が事故多発・渋滞ボトルネック箇所になっているとの具体例を挙げた。
初会合後の会見で涌井委員長は、現在の首都高の状態や今後の議論を「非常に健康な中年だが、働き過ぎであちこちに支障が出てきている。これを薬で治せるのか、抜本治療をやらなきゃいけないのかを体系付けるもの」と医療に例えて説明。現行の償還計画などにとらわれずに「純然たる技術的な議論にしたい」と抱負を語った。
委員会は、4月の次回会合から更新箇所を抽出して優先順位などの検討を進め、8月に中間報告する予定。その上で、更新の実施までに必要な検討事項や大規模更新の在り方を整理して、12月の提言の取りまとめを目指す。