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北海道建設新聞社
2012/02/07

【北海道】厳寒での防災対策は本道技術者の責務−土木学会道支部がシンポ 

 土木学会北海道支部が札幌市内で開いた2011年度土木技術発表会で、『東日本大震災から学ぶ北海道の安心、安全と社会基盤整備』をテーマとしたシンポジウムが3日に行われ、地域での防災問題や防災インフラの在り方などが討議された。パネリストからは「防災に同じ答えはない。地域間で回答は異なる」「厳寒での防災を考えるのは北海道の技術者」「自治体間の連携が重要」など多様な提言をした。また、札幌に震度7・2以上の地震が発生した場合、道外からの助けがないと被災者支援が難しいとのシミュレーションも報告された。
 パネルディスカッションでは、室蘭工大大学院工学研究科の田村亨教授をコーディネーターに東大大学院工学研究科社会基盤学専攻の家田仁教授、北大大学院工学研究院の岡田成幸教授、室蘭工大大学院工学研究科の木村克俊、北見工大社会環境工学科の高橋清教授4人が論旨を展開した。
 岡田教授は、阪神・淡路大震災時の物資支援に基づき、「他地域からの水や食料の支援距離は200`が限界」と分析。現地に届くまでの時間差も重視して「被災者の需要は変化する。また、送るだけではだめで、現地で仕分けする人も必要。きちんと被災者の手に渡るような後方支援が必要」と述べた。
 さらに、札幌が阪神・淡路大震災規模の地震で被災すると「道内だけの支援協力でなんとかなりそう。ただし、それ以上の規模だと無理だろう」とのシミュレーション結果を示した。しかし、支援を受けるに当たり港湾が被災した場合は高規格道路で支えるなど「道路ネットワークの維持が肝になる」と説いた。地域防災に対する企業の積極的な参加も提案。実現には行政の主導を期待した。
 木村教授は海岸工学の立場から「防災インフラの精度をどう高め、粘り強くしていくか」と述べ、「逃げる時間を作れる」と土木の果たす役割を改めて強調。「特に厳寒での災害対策を練るのは北海道の技術者。ほかは(積雪寒冷地以外では)だれも考えない」とエンジニアの責務を説いた。
 一方、高橋教授は根室や釧路など道東の各自治体と協議している防災計画、減災に向けた取り組みを報告。「防災とはリアリティー。架空でない現実と照らし合わせた議論が必要」とし、道東は自治体間が離れ、北海道の抱える地方自治の課題や特徴を表していると問題提起した。
 避難計画の住民への伝達方法も課題とし、国の関与や市町村との横断的な連携、被災後の復興を視野に置いた防災計画、避難行動のルールづくりなどを議論のテーマに挙げた。
 家田教授は、北海道のインフラを本州と比べるのではなく、国土や人口密度、気象が似ている欧州と比較すべきとの持論を挙げながら、国内の歴史的な災害を振り返って、東日本大震災での避難手法や通信デバイスの在り方に言及。「軽トラックなどで逃げる人が多く、車で高台近くまで移動した。地方で車を使わない避難は考えづらい」と車両移動を前提とした避難誘導も留意した。
 復興に向けた課題も説明。土地利用施策とセットで、コンパクトシティーの施策と追従する土地再編を方向性の一つに挙げた。さらに「北海道は距離空間のスケールが違う。地域防災は、それぞれの地域で答えが違うのではないか。北海道の中でも均一ではない」と地域性を根底に置いた防災、減災を説いた。