建通新聞社(神奈川)
2011/12/12
【神奈川】公契約条例 黒岩知事「引き続き実現の可能性を検討」 さまざまな課題も指摘
地方公共団体が発注する工事や委託業務で、労働者の適正な賃金を確保することを目的とした「公契約条例」の制定について神奈川県の黒岩祐治知事は、県議会本会議の答弁で、国の法令などの見直し状況を把握しながら、「引き続き(条例化)実現の可能性を検討していく」との考えを示した。ただ、「具体的にどのような契約を条例の対象とするのか、また賃金の実態調査にかかる事業者や行政の負担増など、実務的にもさまざまな課題がある」とも述べた。たきた孝徳議員(民主・かながわクラブ)の代表質問に答えた。
公契約条例は、全国に先駆けて千葉県野田市が定めたほか、川崎市が政令指定都市としては初めて、公契約(公共工事などに従事する労働者の適正な労働条件を契約事項とする契約)についての基本的な考え方を盛り込んだ川崎市契約条例を可決、施行している。
たきた議員は、「神奈川県の入札契約制度は進化してきているが、一方で過度な競争に伴う低入札価格化を招いたとの声もある」と指摘。結果として、「労働者や下請け企業にしわ寄せが及び、賃金低下を招きかねない」と懸念を示した。
その上で、「最低賃金法など、法律との整合性を図る必要があるとされ、導入に慎重な態度を取らざるを得なかったことは承知している。現在は、政府が答弁書などで基本的に問題はないとの見解を示している」と述べ、黒岩知事の見解をただした。
黒岩知事は、「県では工事請負はもとより、警備や清掃の委託業務でも、契約書に最低賃金法などの労働関係法規の順守を義務付けている。また、必要に応じて受注者に対し、順守状況の報告を求めることができる旨の条項を規定している」と、適正な賃金の確保に向けた取り組みの現状を説明した。
さらに、ほかの都道府県の動向について「賃金など労働条件の問題は、一地域で対応する問題ではなく、国などが法令などで対応すべきという理由で、条例を制定しているところはない」と言及。
今後の検討に当たっては、「県による賃金規制の是非、県のみで実施した場合の実効性、規制する賃金水準の在り方などの課題を考慮する必要がある」との認識を示した。