静岡県の「分散型エネルギーシステム活用研究会」(会長・荒木信幸静岡理工科大学学長)は2日、富士市内で第2回会合を開き、富士・富士宮地域でのエネルギーの“地産地消”に向けた事業スキーム(枠組み)の検討を開始した。事務局の県が作成した電力融通と熱融通についての複数のスキームのメリットや課題を話し合ったものの、モデル事業のスキームは固まらず、今後実施する事業者へのアンケート結果を踏まえて決めることとした。また県側が、2012年度に協議会を設置し、13年度にモデル事業を開始したいとの考えを示した。
県では、電力の融通で「託送」「特定供給」「共同受電の活用」の3パターンのスキームを想定。
託送では、コージェネレーションシステムを導入している工場などで発生する余剰電力を、特定規模電気事業者(PPS)に売電し、系統電力ネットワーク・自営線を利用して契約電力50`h以上の需要家(他社の工場など)に電力を供給するケースと、電力会社と託送契約を結び(自己託送制度を拡大して)系統電力ネットワークを通じて需要家に電力供給するケース。
特定供給では、電力会社から既に共同受電している工業団地(富士・富士宮地域の9工業団地のうち4カ所)に、近隣の工場が天然ガスコージェネレーションシステムや自家発電で余剰となった電力を自営線を敷設して供給(売電)する。
共同受電は、電力会社から共同受電している工業団地で、団地内の工場の天然ガスコージェネレーションシステムや自家発電による余剰電力を、団地内のほかの工場に売電する。
一方、熱の融通は、コージェネレーションシステムの廃熱を、熱需要のある近隣の工場やホテル、集合住宅などに活用するスキームを想定した。
研究会の議論では、電力会社の委員が「自己託送制度は電力会社の自主的な取り組み。一般の送電に支障が出ないよう、どこまで開放するか議論が必要」「自己託送を拡大するとPPSの事業範囲を狭めることになる」などの意見が出た。また、事業者の委員からは「停電などで工場の稼働が止まらないようコージェネレーションシステムを導入しているが、地域に売電するなら常時稼働させる必要がある。稼働と売電のコストを検証する必要がある」といった声があり、モデル事業のスキームを絞り込むことができなかった。
そこで、今回の議論の結果と、県が富士・富士宮地域の事業者に実施するアンケート調査の結果を踏まえ、次回の会合でスキームを固めることにした。
(2011/12/7)
建通新聞社 静岡支社