事務局としてビジョンの策定に携わった静岡県交通基盤部。森山誠二部長は、技術と経営に優れた企業の具体像として示されたビジネス経営体を「公共工事の担い手として、また災害時の守り役として地域に存続してもらわなければならない存在」「公共工事を受注するだけでなく、存続するための仕事を自ら考える存在」ととらえ、2012年度に支援策を開始する方針を明らかにした。県の描く“存続すべき建設業”とその支援策とはどのようなものなのか。(聞き手は報道部=鈴木典和)
――ビジョンをどうとらえているのか。
「特に大きな意義があるのが、ビジネス経営体という概念だ。『技術と経営に優れた企業が必要』と言われ続けてきたが、その具体像が分からず、今では“お経”のように言葉だけが繰り返されている。地域にとって必要な建設業とは何か、一歩踏み出すことが必要と感じていた中で、“見える形”を示していただいたことに感謝したい。あとは、われわれ行政が、これを公共事業の発注や支援にどうつなげていくかだ」
――ビジネス経営体の支援とはどのようなものか。
「ビジネス経営体には二つの考え方がある。公共事業の担い手として良い仕事をしてもらいながら、災害時の守り役として地域に存在してもらうこと。次に、『企画部門を有する』と記載されているように、公共事業の受注だけでなく、どのような仕事をしていくべきなのかを自ら考える、つまり自立した企業という位置付けだ」
「支援策としてまず、公共工事をビジネス経営体に積極的に発注していくとともに、ビジネス経営体が今後の経営を考える際、経済産業部などほかの部局とも連携し、経営状況の診断や経営力を高めるための助言などを行う」
「また、合併などでビジネス経営体を目指す企業への支援として、合併をしやすい環境づくりを行う。一方、転業や廃業がスムーズにできるよう誘導していかなければならないだろう。12年度から具体的な支援策を用意できるよう、予算も含め検討を進めていく」
――総合評価制度の拡充や受発注者間の対等性の確保など入札・契約制度の改善も求められている。
「価格以外の評価項目の拡充など、まず、県の入札・契約制度を見直すことが必要。すぐにできる取り組みとして、新規雇用を行った事業者を総合評価で加点する措置を11月1日に開始した」
「受注者と発注者の本当の意味での対等性も確保しなければならない。例えば、災害協定に基づく活動などでは、待機費用などが企業のボランティアで成り立っている。しかし、本来、行政がきちんと手当てすべきものだ。待機費用を含めた災害協定の在り方などについての見直しも始める」
――建設産業にどのような取り組みを求めるのか。
「建設工事は、基本的に地域の人の目にさらされている仕事だ。公共工事については特に、高品質の工事を施工してもらうだけでなく、恥ずかしくない“仕事ぶり”を見せてもらうことで、公共事業そのものへの理解も深まる。そして、“地域の担い手”であるからこそ、社員を大切にし、地域の中で頼られる存在、尊敬される存在であってほしいと思う」
(2011/12/2)
建通新聞社 静岡支社