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北海道建設新聞社
2011/11/28

【北海道】石炭活用へガス化や不純物除去など高度な国産技術を紹介 

 北海道立総合研究機構工業試験場は、21日に札幌市内で開いた「環境・ものづくり未来セミナーin札幌」で、バイオマスや再生可能エネルギーなどの可能性を示した。石炭をガス化してガスタービンで発電するクリーンコールテクノロジーも紹介。産業技術総合研究所が開発した、不純物の灰分を除去してCO2削減効果や燃焼効率を上げる『ハイパーコール』を話題提供し、豪州やインドネシアといった産出国はもちろん、石炭火力発電所の利用が多い中国や米国などでの技術導入を期待した。
 産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門の鷹觜利公グループ長が「クリーンコールテクノロジー 石炭のポテンシャル」と題して講演。鳥取環境大の横山伸也教授が日本のバイオマスエネルギーの動向について、NERC(本社・札幌)の大友詔雄センター長がエネルギーによる地域内経済効果の視点から「エネルギーの地産地消」をそれぞれ説明した。
 鷹觜グループ長は、経済発展が続く東南アジアなど、世界のエネルギー需要や資源可採年数などを基に「再生エネルギーで全てを賄うには、まだ時間を要する。(現実的にみて)当面は化石燃料に頼らざるを得ない。日本は世界最高のクリーンコールテクノロジーを保有している」と指摘した。
 石炭をいったんガス化し合成ガスにしてから、ガスタービンの燃料にして火力発電所で利用する。ガスタービンと蒸気タービンとの組み合わせで、現在の微粉帯火力発電よりも効率良く発電できるという。
 ハイパーコールは、石炭の中に含まれている不純物の灰分、アルカリ金属類を事前に取り除いた低灰分炭。改質には溶剤を用い、抽出・イオン交換する。溶剤を石炭中に染み込ませると石炭凝集が緩み、可溶分が溶解して、灰分や不要分が沈殿して分離する。
 産総研が開発した技術は簡便で、従来技術よりも低い約360度の熱と2メガパルス程度の圧力で処置できる利点を持つ。灰の抽出率は60%で、灰分はそれまでの11%から0.02―0.1%の範囲で削減。カロリーは10―15%増加し、燃焼性を高める。
 石炭には高品質なものだけでなく、灰分が高く硫黄含有量の多い低品質炭、低カロリーで高水分、自然発火性も抱える低石炭化度炭がある。可採埋蔵量のほぼ半分が低品位炭だ。安価だが輸出が困難で、山元の熱源程度の使い道にとどまっている。ハイパーコールは、この低品位炭からも製造可能で、ガス化の反応性を向上する。
 産総研はクリーンコールテクノロジーを用いた石炭火力発電での米国、中国、インドのCO2削減効果を合計10億dと試算する。これは日本の石炭火力発所から排出するCO2量5倍弱に当たり、国内全体の排出量の約8割に相当する量。また、高温ガス化による合成ガス製造の課題にも対応し、工程を1段階でできるという。
 鷹觜グループ長は「価格でみれば国内炭は、輸入炭と同程度以下なので利用の可能性はある。北電も海外炭が主力だが、国内炭の活用を引き続き検討する方針だ」と見通し、石油依存度の高い北海道で、価格上昇や原子力依存度の見直しなどの観点も含め、地域資源を生かしたエネルギーベストミックスの多様化を説いた。