建通新聞社(中部)
2011/11/28
【愛知】常滑市 新常滑市民病院の基本設計 資質評価型簡易提案方式で設計者選定
常滑市は28日、常滑市民病院の新病院建設計画に伴う基本設計の設計者公募を開始する。選定方式は、設計案ではなく、設計者を選ぶ資質評価型簡易提案(QBS)方式を採用。12月1日から5日まで質疑を受け付け。12月12日から2012年1月4日までを審査図書の提出期間とし、1月13日に1次審査。その後、2次、3次審査を経て、3月8日の選定結果発表を予定している。
今回の資質評価型簡易提案方式では▽応募者が新病院の基本構想をどのように理解し、どのように設計に反映しようとしているか▽これまでの設計実績を新常滑市民病院の施設でどのように生かすか―など、設計案ではなく設計者個人を評価。従来の選定方式では、応募者の設計案や設計価格を審査する方式が一般的だが、設計案ではなく人を選ぶ選定方式となっている。
審査対象となる設計案を作成しないことで、応募者の負担が軽減されるほか、選定段階の設計案に縛られない設計作業となるメリットがあるようだ。
選定委員会は、名古屋大学大学院の奥宮正哉教授と谷口元教授、愛知県病院事業庁の二村雄次庁長、中山隆常滑市民病院院長、常滑市の古川泰作副市長、山田朝夫参事の6人で構成。第1次審査で、実績や取り組み体制、考え方などの資料を基に応募者を5者程度に絞り込み、第2次審査で簡易提案書による提案を評価。
3次審査では、3者程度に絞った候補者からのプレゼンテーションやヒアリング、実績作品の審査により、最優秀者を決定する。プレゼンテーションやヒアリングは公開。また、設計者のアイデアを尊重し、第2次審査の提案は、常滑市が10万円(予定)で買い取ることとした。
基本的な計画条件は、病床数が260床程度(HCU病床5床、回復期病床40床、亜急性期病床20床、特定感染症病床2床含む)、診療科23課。免震構造を前提とし、延べ床面積は1万9500平方b程度を想定している。外来患者数は1日平均約600人を想定。駐車場は平面または立体で700台程度とした。
建設地は常滑西特定土地区画整理事業の常滑ニュータウン内54−2街区の一部で、敷地面積約3万平方b。概算工事費は病院本体と外構、解体工事、設計監理費などを合わせ約55億円をみている。
事業スケジュールは、基本設計の設計期間を12年9月までとし、実施設計を同年10月から13年9月。13年10月から工事に着手し、15年2月の完了、同年5月の開院を見込んでいる。
QBS方式 資質評価型は、アメリカやヨーロッパで多く採用されている設計者選定方式で「Qualifications Based Selection」を略してQBSと呼ばれる。従来のコンペ方式などが、提案される図面・模型制作物などの「設計案」を評価するのに対して、資質評価型では実績や考え方、対象案件への理解など「設計者本人」を評価。成果物が当初の提案に縛られがちな従来方式に比べ、発注者と設計者が共同作業で施設を作り上げていくことができる点がメリットとされている。国内の自治体では、01年の横須賀市美術館設計者選定で初めて採用。その後、06年の町田市新庁舎などで採用されたほか、中部圏では岐阜市が10年に岐阜大学医学部等跡地整備の設計者選定を同方式で実施した。今回の常滑市民病院は、町田市新庁舎の案件に近い資質評価型簡易提案方式を採用している。