建通新聞社(神奈川)
2011/11/16
【神奈川】「かながわ方式」の確立へ 箱根水道営業所包括的業務委託 13年度にも委託事業者を選定 水ビジネス研究会で業務範囲など議論
神奈川県企業庁は14日、箱根水道営業所管内を実際のフィールドとして活用し、海外展開も視野に入れた「かながわ方式による水ビジネス」のモデルづくりに向け、産学官による「かながわ水ビジネス研究会」の第2回会合を開いた。この中で、箱根地区水道事業の包括的業務委託を通じた「かながわ方式」を確立するため、短期、中長期のスケジュールを提示。それによると、現在進めている基礎調査を基に、同研究会の意見などを反映させながら、2012年度に事業者の選定準備に着手。13年度に委託事業者の選定手続きを進め、同年度内に契約、事業を開始する。それらを基に、中長期でビジネスモデルを構築し、国内の他地域や海外への展開を目指すことにしている。
民間事業者が水ビジネスを海外で展開する際の実績を積むことを目的としたのが「かながわ方式」。手法としては、@県箱根地区水道事業の業務を包括的に委託し、ビジネスモデルを構築A同ビジネスモデルを国内の他地域に展開し、水道事業運営の実績を積むB水道事業運営の実績と県の支援などにより、海外水ビジネスを展開―の3段階のステップで進める予定でいる。
今回、「共同体を形成するための課題と条件」をテーマに、委託する業務範囲や事業体のかたちなどについて意見を交わした。
当初段階の業務委託の範囲は、「施設所有」「大規模修繕」「資金調達」などを現行通り企業庁業務とし、これまで個別に委託していた「設計」「発注」「運転管理」「漏水対策」などを包括的に委託する。ただし、それらを範囲とした包括的業務委託では、海外展開の際に、求められるノウハウを得られないことから、将来的に事業形態や範囲を見直していく。
参加者企業からの同様の質問に対して企業庁側は、「海外展開を視野に入れた場合、経営全体に近いかたちで委託するのが望ましい」とした上で、「今個別に委託している業務は当然だが、それに加えてどこまで依頼できるか。地方公営企業法など法令の縛りをチェックしつつ、事務手続きを詰める中で決めていきたい」と答えた。
また、事業者の形態について「さまざまな業務があるため、単一の企業ではなく、共同事業体をイメージしている」としたほか、入札方法については「金額のみの入札はない。事業に対する専門的な実績を評価することになるのではないか。ただ、そこまで(の結論に)至っていない」と述べた。
次回会合は12年1月下旬に開く。
研究会の冒頭、群馬県太田市上下水道局の大隈良也参事が、浄水場管理業務から徴収・総務業務までを一貫して民間に委託する水道事業包括業務委託の先進事例を紹介した。委託に当たっては公募型プロポーザル方式を採用。明電舎、ジーシーシー自治体サービス(待機業務による漏水修繕施工。実績を持つ71社が出資して設立)、太田市水道管理センター(水道料金など徴収業務)による3社構成のグループが受託している。
研究会には、新たな水道事業に関心を寄せる関連メーカーや総合建設企業、建設コンサルタントなどが参加。研究会の目的について企業庁は、「官民で自由に意見を交わし、研究を深めるのが目的であり、公式見解を示す場ではない」としている。