北海道建設新聞社
2011/11/11
【北海道】CAE活用へ産学官が活動展開−製品化前に挙動や機能解析
CAE(コンピューター エイデッド エンジニアリング)の有効活用に向け、産学官で構成する北海道CAE利用技術研究会が積極的な活動を展開している。CAEは、コンピューターを使って製品開発時や試作機の製作前に製品の挙動確認、機能解析などをシミュレーションする技術。開発コスト削減や期間短縮につながる。小ロットで多品種を生産する中小製造業では利点を生かしづらい側面もあるが、北海道立総合研究機構工業試験場は、道工試の持つ機材を事業者が使って、機能解析することを薦めている。
技術開発に当たっては、設計値と実際の機能や稼働状況の差を確認するために試作機で実証しなければならないが、そのコストや製作期間が製品化の負担にもなっている。
CAEは、試作機の製作前にパソコンで意図した通りに機械が動くか、壊れないかなど運動、強度、振動、衝突、熱伝導、流体、電磁場など、広い範囲の挙動を模擬するもの。度重なる試作機の製造費、開発時間を抑えるほか、品質向上にもつながる。
同研究会は、CAEを有効活用した道内機械産業の技術力、商品競争力向上を目的に日鋼デザイン(本社・室蘭)の発案で、2010年8月に発足。道内産業の活性化や、CAEを駆使した新たな製品・技術開発、技術情報の交換、新規事業への進出などの展開も期待している。
メンバーは日鋼デザインのほか、ISS北海道(本社・札幌)、アルゴシステムサポート(同・札幌)、荏原環境テクノ北海道(同・室蘭)、NTTデータエンジニアリングシステムズ(同・東京)の設計関連5社と、室蘭工大、北大、道工大の3校、室蘭テクノセンター、苫小牧市テクノセンター、道工試の3機関。
CAEは、自動車メーカーをはじめ大手メーカーでは一般的な技術というが、道内では普及が遅れていて、道工試では「道内製造業は多品種少生産型が多く、なかなか(メリットが)生かしにくい」と指摘。技術の詳細を認識している企業もまだ多くないとみている。
しかし、製品開発に必要な基本性能の解析需要は高く、「パソコンですぐにできることなのだろうと(簡単に考え)解析依頼してくるケースもある」という。
CAEでシミュレーションをするには、解析する挙動や製品の種目などで異なり、相当するソフトウエアや機器が必要になる。道工試では、CAE機器設備を数種類保有しているため、簡単な操作を教えた後に企業自らが検証することを薦めている。
同研究会は、10年8月に「中空材料からなる殻構造物最適化」をテーマとした第1回講演会を開催。11年1月に日本製鋼所室蘭製作所の工場見学会と「衝撃工学からみた空手道の威力」と題した2回目の講演会、7月には「CAEの最先端は自動車メーカーだ」と、トヨタ自動車のCAE部門に相当するトヨタテクニカルディベロップメント(本社・愛知県豊田市)の技術部長を招いて3回目の講演会を開いた。
11年度の活動の締めくくりとして、第4回講演会を12月1日に室蘭工大地域共同研究開発センターで企画。北大大学院工学研究院の佐々木克彦教授を講師に招いて「高熱伝導複合材料の開発とCAE」をテーマに講義する。会員以外も受講可能。申し込みは道工試のサイト(http://www.iri.hro.or.jp/techinfo/workshop/11/cae111201.pdf)まで。