北海道建設新聞社
2011/11/10
【北海道】陽子線でがん治療−北大が13年度末完成へ道内初の施設に着工
北大は9日、体内のがん組織を陽子線を用いて治療する、分子追跡治療に関するプロジェクトの概要を明らかにした。医学部内に報道機関を招いて説明会を開き、現在進めている陽子線治療施設の建設を2013年度末に終え、竣工と同時に1人目の治療を開始することを報告した。
このプロジェクトは、放射線によるがん治療の専門家である北大大学院医学研究科の白ナ博樹教授と梅垣菊男特任教授らが、京大と共同で10年3月から進めている。
国の最先端研究開発支援プログラムに基づき、約50億円の補助を受けている。これを基に北大は、道内初となる陽子線治療施設(RC造、4階、延べ2960m²)の建設を医学部敷地内で開始した。設計は日建設計、主体は安藤建設、電気は北海電気工事、機械は新菱冷熱工業がそれぞれ担当。13年度末の竣工を目指している。
陽子線はX線のように体内を透過せず、体内にとどまってがん細胞の手前で線量が最大になる特性を持つ。このため、X線以上に目的部位をピンポイントで治療でき、大型のがん組織や動くがんの治療にも効果がある。正常な細胞への影響が少ないため、患者負担の軽減も図ることができるという。
陽子線治療施設には、体内の動くがん組織を狙い打ちする動体追跡照射技術と、がん組織の形状に合わせて照射するスポットスキャニング技術を組み合わせた分子追跡陽子線治療装置を入れる。装置の搬入は、建屋の工事が完了する来秋を予定している。
説明会で梅垣特任教授は、がん治療の初期から放射線を用いることが、日本では少ないが、今後は増加するとの見通しを説明。「プロジェクトを成功させ、陽子線がん治療の有用性を北海道から盛り立てることが課題」と述べた。