静岡県は、農業水利施設への新エネルギー導入で、農業用水路への小水力発電設置と、農業用貯水池への太陽光発電設置に向けた概略設計業務を年内にも発注する。国庫補助(全額国費)の内示後、業務を委託し、現地調査や施設配置などとともに採算性を検証して2011年度末までに実施の可否を判断する。また、小水力発電の導入促進に向け、土地改良区や民間企業、行政で組織する協議会を設置する意向で、12年1月にも準備会を開き、3月末までに本会を立ち上げる。
小水力発電の導入を検討するのは、浜松市内の農業用水路。過去に実施した導入可能性調査の結果、水流により50`h程度の発電が可能で、用水の施設運営に必要な電力を賄いつつ売電する出力を得られることが分かっている。
想定している発電方式は、農業用水路の落差のある場所に水圧鉄管と発電機を設置する「圧力管方式」。今後委託する概略設計の中で、現地調査や施設配置の検討、水車形式の検討、水理計算、電力需給計画の策定など行い、事業の実施が可能か判断する。
農業用水路に小水力発電設備を導入する場合、事業主体は受益者(利用者)である土地改良区となる。そこで県は今後、概略設計と並行し、対象となる土地改良区との協議を進めていく。
事業化する際には、土地改良区が国庫補助を得て直接行う場合と、県が事業協力する形が考えられている。概略設計の結果を基に、これらの事業手法や、設備の規模や設置場所などを盛り込んだ事業計画を策定する。
並行して、土地改良区や民間企業、行政で構成する協議会を設置。小水力発電に関する情報を関係者が共有し、簡易で安価な製品開発を支援することで、県内での幅広い導入を目指す。
一方、太陽光発電設備の設置を検討するのは、静岡市内の民間の農業用貯水池。まず、現地調査と施設導入可能性調査を行った上で、施設の配置や規模などを概略設計の中で検討する。ファームポンド(農地や農地の近くに設ける小規模な貯留施設)の天井部分に設備を設置し、発電した電力を施設園芸(ハウス)などに利用する形を想定しており、発電装置の出力や需要などを見極めた上で、事業化の可能性を探る。
県では、今回の事業をモデルに、民間の農業水利施設への新エネルギー導入を促す考えだ。
(2011/11/7)
建通新聞社 静岡支社