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福島建設工業新聞社
2011/11/01

【福島】旧ノートルダム修道院、風前の灯。建築家集団「なぜ壊す」

 建築専門家集団が「なぜ壊すのか」―。第2次世界大戦中に敵国民間人の捕虜収容所に充てられたり、戦後は東京の戦災孤児を受け入れるなど歴史に翻弄されたゴシック建築が今、風前の灯にさらされている。
 大震災で被災し、今月14日に解体するという福島市花園町の旧ノートルダム修道院を訪れた県文化財保存審議会委員(建造物担当)で日大工学部上席研究員の狩野勝重工学博士や建築学会、日本建築家協会(JIA)の会員たちが異口同音に異議を唱えた。
 文化庁から東日本大震災文化財建造物復旧支援事業の業務を受託した同学会は、JIAなどの応援を受けながら関東、東北支部の被災地で調査、点検業務を進める。29日は、福島市内の建造物を調査、その一環として同修道院を訪れた。
 旧ノートルダム修道院の歴史は、1932(昭和7)年、カナダのコングレガシオン・ド・ノートルダム修道会が福島市に5人の修道女を派遣したことに遡る。建物はチェコ人のヤン・ヨセフ・スワガーが設計し、横浜市の関工務店が設計した洋風のゴシック建築で、この日同修道院に足を踏み入れたのは狩野審議会委員のほかに速水清孝日大工学部建築学科准教授、田代洋志JIA本部再生部会副部会長、上遠野公一建築学会文化財ドクター、そしてJIA福島地域会のメンバーら9人。福島市教育委員会事務局文化課の紺野徹文化財係長も立ち会った。
 築76年経ってなお凛とした建築は、荘厳さが漂う聖堂をはじめ壁や天井がはがれ落ち、屋根材が崩れるなどの被害が見受けられるものの骨格は毅然としており、むしろ白漆喰の壁や、磨き込まれた板材、手の込んだ職人技に一行は感嘆の声を漏らした。案内役のシスター・熱海紀子さん、山口満子さんから11月14日に解体することになっていることを聞かされ、調査団からは「もったいない。補修して登録文化財にしたい」「県どころか国の文化財としの価値もある」「素人さんはこの状態をもうだめだと思うかもしれないが、専門家なら耐震性に問題ない、絶対に壊せなどといわない」「全体の構造的歪みはない。コンクリートの防火壁周辺もまったく無傷」「修復費用の方が解体費より安い」「福島から貴重な文化財を消してはならない」「震災のシンボルとして残すべきだ」などの声があがった。
 調査を終えた一行は、早急に調査結果をまとめ、解体の方向性を出した同修道会の本部(東京都)に再考を促すべく、早急に要望書を提出することも検討している。