建通新聞社
2011/10/20
【大阪】大阪府住宅まちづくり部 塔状高層住宅の耐震事業開始へ 日本建築総合試験所で検討作業 12年度にも一部基本計画へ
大阪府住宅まちづくり部は、府営住宅の耐震化を進めるため、従来の工法では耐震改修が困難な塔状の高層住宅について、新たな工法の導入を検討。日本建築総合試験所(吹田市)に委託し、検討作業を進めており、早ければ2012年度から住棟の耐震診断(基本計画含む)を開始。制震装置の導入なども検討する。
現在、耐震改修を実施している板状型高層住宅では、一方の長方向にバルコニー、もう一方に廊下があるというタイプがほとんどのため、廊下側の長方向にPCアウトフレームを新設し、建物全体の保有耐力増大を図る工法を採用している。
一方、塔状高層住宅は、団地のシンボル的な棟で、ポイント型とも呼ばれる。棟の中央に廊下があり、両側に住戸が並んでいるタイプ。縦横がほぼ同じ長さのため、一方にPCアウトフレームを設置するという現在の工法だけでは必要な耐力が得られないなどの要因で、現在のところ耐震改修は未着手。しかし、府営住宅の耐震化をスピードアップするには塔状高層住宅の耐震化が不可欠なため、新たな工法を検討する。
日本建築総合試験所では、塔状高層住宅での標準的な耐震改修工法を検討。実際の改修では、個々の住棟の条件に合わせて、現在のPCアウトフレームのほか、増壁、壁の厚さ増、ブレースの設置などを検討。公営住宅では珍しい制震装置の導入も考えられるとしている。居ながら施工を条件とする。
塔状の府営高層住宅は、全体で44棟4,547戸あり、これらのほとんどを2015年度までに着手する計画。耐震改修は、1年目が耐震診断(基本計画を含む詳細なもの)、2年目が実施設計(一部着工)、3年目が着工−を基本としている。12年度には一部塔状高層住宅の耐震診断を開始する見通しだ。
府は、新たな「大阪府営住宅ストック総合活用計画」の策定を進めている。20年度の計画期間内に府営住宅の耐震化率を95%に高める計画。途中の15年度には90%の耐震化率を目指す。現在の耐震化率は74%。