建通新聞社(中部)
2011/09/27
【岐阜】県耐震改修促進計画の改訂案まとめる
岐阜県は、県耐震改修促進計画の改訂(案)をまとめた。東日本大震災の教訓から県の取り組むべき対策を検証していた県震災対策検証委員会から提出された報告書(提言)を受けて、10月までに見直すことにしたもの。改訂案では、防災拠点施設などの耐震化や緊急輸送道路沿道の特定建築物への取り組みの強化、耐震化に関する補助制度の見直しなどを新たに盛り込んでいる。
県耐震改修促進計画は、建築物の耐震改修の促進に関する法律第5条の規定に基づき、地震による死者数や経済的な損失などの被害を半減させることを目的に、建築物の耐震診断と耐震改修の促進を図るための計画で、2007年3月に策定された。目標年度は15年度で、住宅や特定建築物の耐震化率を90%に引き上げるほか、特定建築物のうち県有建築物の耐震率を100%にする目標を掲げていたが、住宅の耐震化などの進捗が悪く、東日本大震災を踏まえ見直しが必要と判断されていた。
見直しに当たっては、検証委員会の耐震化分科会での意見などを踏まえ、主に防災拠点施設の耐震化のさらなる促進や緊急輸送道路沿道の特定建築物の耐震化を推進していく。一方、木造住宅における耐震化率の伸びが鈍化していたが、東日本大震災を受け、住宅の無料耐震診断の需要が急増していることから、これを契機に補助制度の見直しや周知の徹底を図ることにした。
県によると、10年度までに県有建築物耐震化の計画的実施で耐震改修対象の施設を残り50棟としたほか、一般木造住宅への耐震診断支援で6984件(11年度は2800件分を当初に予算化し、9月補正予算案でも200件分を追加予定)、マンション含む建築物の耐震診断で93件(11年度は27件分を当初に予算化し、9月補正予算案でも27件分を追加予定)を診断実施している。一方、耐震補強では木造住宅で584件(11年度は150件分を当初に予算化し、9月補正予算案でも250件分を追加予定)、分譲マンションでは実績はなく(11年度に2件分の予算を確保)、特定建築物では1件(11年度は2件分を当初に予算化)を実施するなどしているが、今回の改訂でこれらの促進が図られると期待されている。
県耐震改修促進計画の改訂案のうち、主な追加内容は次の通り。
▽防災拠点施設などの耐震化(@庁舎や警察などの防災拠点施設や避難所の所有者による早期耐震化A防災拠点施設や避難所の耐震化優先順序の見直しB防災拠点施設の設備機能維持や天井落下防止対策など)
▽緊急輸送道路沿道の特定建築物への取り組み強化(@耐震化支援策のさらなる周知と指導・助言の強化A耐震化の状況を踏まえた公表手法の検討)
▽耐震化の普及啓発の内容の充実と手法の見直し(@住宅密集地、緊急輸送道路沿道、地震発生確率や地盤特性などの地域特性を考慮した普及啓発の重点地区の設定A学校での防災教育との連携、耐震改修済み建築物の改修済み表示制度の検討B県と市町村の役割分担の明確化による地域の実情に応じた効率的な普及啓発)
▽耐震化に関する補助制度の見直し(@木造住宅への補助制度への要望に対して予算が不足することのない的確な予算対応A木造住宅耐震補強工事費補助で、所有者・地域の特性などを考慮した補助要件などの見直し)
▽不特定多数が利用する民間特定建築物への取り組みの強化(@耐震化支援策のさらなる周知と指導・助言の強化A耐震化の状況を踏まえた公表手法の検討)
▽宅地被害の周知(@液状化現象が引き起こす宅地被害の発生予測データの活用や過去の被害に関する地域での伝承などのきめ細やかな周知と教育A宅地被害に備え、擁壁・法面、敷地排水施設の点検や生活物資の備蓄などの事前対策に関する周知)
▽「命」を守るための多様な取り組みの推進(木造住宅の簡易補強の積極的な推進、多様な価値観やライフスタイルなどに対応し県民の命を守る視点からの建築物に関する新たな防災手法の検討)