建通新聞社
2011/09/20
【大阪】重要文化財・愛珠幼稚園の耐震改修 文化財建造物保存技術協会で保存修理調査 15年度までに着工
大阪市は、幼稚園の園舎として日本初の国重要文化財に指定されている、愛珠幼稚園の耐震改修について、保存修理調査を文化財建造物保存技術協会で進めている。この調査結果を基に、2012年度に文化庁などと協議。早ければ13年度から設計等の作業に入る見通し。15年度までに着工することを一応のめどとしている。
同幼稚園は1880年6月1日の開園。現在の園舎は1901年3月の完成で、木造平屋800u。現存する幼稚園園舎としては日本最古。御殿風の和風建築物で、敷地周囲の高塀、高い天井高、園庭と遊戯室との間に段差を設けていないなどの特徴がある。
1999年11月に大阪市指定有形文化財第1号に指定された。2007年には、岡山市の市立旭東幼稚園旧園舎とともに、幼稚園の園舎として日本で初めて国の重要文化財に指定された。
所在地は大阪市中央区今橋3−1−11。淀屋橋の南方、船場のオフィス街の中に位置し、適塾跡に隣接している。
100年以上が経過している木造建築物では、使われている部材のどの部分で接ぎ木されているかなどにより、建物の強度が変わるため、耐震診断自体が困難。また、重要文化財であるため、施工でも細心の注意が必要となる。
今回の調査では、耐震改修を行う範囲、工事の内容などについて一定の方向性を導き出す。これを基に、文化庁などと話し合い、方針を固めていく予定。2012年度予算には調査費などを要求する見込み。設計費など、工事に向けての予算化は13年度以降となる。
実際に使用している重要文化財の耐震改修は全国的にもまれ。歴史的木造建築の耐震性確保で、今後の指針となるものと注目されている。