北海道建設新聞社
2011/09/15
【北海道】観光客戻り道内景気に回復感−日銀など相次ぎ上方修正
東日本大震災の発生から半年が過ぎ、道内景気の回復感が強まってきた。日銀札幌支店と北海道経済産業局が、月例の景気判断を相次ぎ上方修正。その根拠として、原発事故後の風評被害に見舞われた観光業の回復を挙げている。道内の観光地には、国内や海外からの観光客が戻ってきた。この流れが宿泊施設の設備投資再開に結び付くことに期待が掛かっている。
日銀札幌支店と経産局はこのほど、9月の経済概況を発表し、震災に伴う下押し圧力が薄れていることから、道内景気の総括判断をそれぞれ引き上げた。上方修正は日銀札幌支店が3カ月連続、経産局が2カ月連続。製造業のサプライチェーン復旧に伴う生産面の回復が主な上方修正の要因だが、9月はこれに加えて、来道観光客数の前年同月比減少幅が、震災後半年を経て少しずつ縮小してきた点を考慮した。
各観光地では夏以降、台湾やシンガポール、香港など、中国本土以外からの外国人観光客の増加が続いた。修学旅行の行き先を東北地方から道内に変更したことに伴う需要や、道外からの避暑需要も新たに生まれた。
定山渓温泉では3、4月と連続して客数が約2割下回り、6月末まで低調な状態が続いたが、7月に入り状況が一転。現状では5%増まで回復した。地元観光協会では「台湾からの観光客は着実に増えている。中国本土の観光客はまだ少ないが、来年の旧正月シーズンまでには前年並みに戻したい」と意気込む。
他の観光地からも中国本土以外の観光客が回復しているとの声が多く聞こえる。「過去最高水準の円高が進んでいるため、今後も厳しい局面は続く」(道東の観光関係者)という指摘もあるが、10月末の道東道夕張IC―占冠IC間の開通や、紅葉シーズンをこれから迎えるという好条件を前に、最悪期は脱したとの見方が強まっている。
札幌市内でも主要ホテルの8月の宿泊稼働率が震災後初めて前年同月を上回るなどの変化が生じている。
稼働率が3ポイント強上回ったという札幌グランドホテルでは「着実に回復しているという印象。北海道観光振興機構などが展開している海外観光客を呼び戻すためのキャンペーンが効果を挙げているのでは」と話す。計画中の東館全面改装については、震災前の予定を変えず、2013年度着手を目指している。
経産局によると、震災後の収益悪化により、道内ではいくつかの宿泊施設が、予定していた設備投資の先送りや見直しに向けた検討をしている。観光客数が震災前の水準に戻りつつある中、これら設備投資の再開がいつになるかが、本格的な景気回復の鍵となる。