北海道建設新聞社
2011/08/17
【北海道】ダム湖の流木を緑化材に−ポン菓子製造機器の原理使い
日本基礎技術(本社・東京)は、管理者が処理に頭を悩ませているダム湖の流木を再利用した「膨軟化チップ吹付工法」を普及展開している。流木や間伐材などを、ポン菓子製造機器の原理を汎用した装置で水蒸気爆発させた『膨軟化チップ』に変え、緑化資材として用いる。このチップは、木質繊維が内部で破壊され、柔らかで吸水性や保水性に優れた特性を持つ。土壌への還元が早く、長期間の堆肥化が不要。特殊な機械を用いずに緑化できることから、同社では寒冷地での適応性も指摘している。
7月に札幌で開かれた北海道環境保全技術協会のセミナーで、東京本社の池田昌義技術部長が、北海道開発局の発注工事など全国各地の実績を踏まえながら技術の優位性を説いた。
池田部長は、林野庁と国土交通省による「ダム貯水池における流木流入災害の防止対策検討報告書」のデータを基に、1ダム当たりの全国平均流木流入量が550m³(2004年)に上ると説明。流木により施設・構造物の破損、ダム貯水容の減少、発電量の低下、取水・放水機能減少などを招くと指摘する。
同社の工法は、ポン菓子製造機器の原理を汎用している点が特徴。どんや爆弾あられなどとも呼ばれる米菓子を作る穀類膨張機は、水蒸気爆発で米を膨らませているが、この技術を基幹としたドイツ製のバイオマス用装置を改造し、膨軟化装置とした。
1次破砕した原料を装置に投じ、スクリュー式の断熱圧縮で約100度、1麭齦の圧力を加える。すると同時に水蒸気爆発が起こり、機器先端口部から膨軟化チップが飛び出す。火を用いずに連続処理できるメリットがある。
膨軟化処理したチップは、圧縮加熱によって内部の木質繊維が破壊され、柔らかで吸水性、保水性、通気性などの良い物性に変わる。
その結果、緑化時の分解速度が速まるため原料を長期間養生し、堆肥にしてから緑化する工程を効率化。発芽・生育阻害を抑えながら、土壌還元を早める効果が期待できる。高圧処理するため病害虫の除去にも効果的という。
装置は流木だけでなく、間伐材、伐採材などでも利用できる。吹き付けは、在来工法で施工可能で、すき取り土や客土と混合しやすいメリットもある。
従来の堆肥化工法と異なり、広大なストックヤードを必要とせず、寒冷や降雪の影響を受けにくい利点を持つ。破砕は1次破砕だけで、75_程度のサイズで良い。また、生チップ工法と比べると、すき取り土や客土と混ざりやすく、材料を均質化できる点が特色。初期発芽効果や生育も期待できる。
適用範囲は、工種が植生基材吹き付けや客土吹き付けなどで、施工対象は切り土、盛り土斜面、法枠内など。法面直高さは80m以内で、斜面勾配は50度以下。吹き付け厚は3―10cm。
池田部長は北海道での適用性として、寒冷地でも土壌還元が早く、植生が良いほか、高吸水性により客土と混ぜやすいため、伐採材や流木材が活用しやすいなどと説明。バイオマス、ペレット燃料、炭化など多様な利用法も示した。
道内では、当別ダムの法面や道横断道本別町貴老路道路改良など8件の施工実績がある。