国土交通省が募集していた「先導的官民連携支援事業」に、浜松市の「公共下水道の包括的民間委託」が採択されたことを受け、同市は事業化に向けた調査費を9月補正予算に盛り込む方針を固めた。順調なら下半期に可能性調査などのコンサルタント業務を委託する。このほど行われたPFI法の改正などを背景に市は今後、下水道事業の包括的民間委託について検討を本格化する。
PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ=公民連携事業)やPFIの拡大を目指して国交省が募集していた支援事業に対し同市は、「公共下水道の包括的民間委託・公共施設等運営権検討事業」を提案した。
同市の下水道事業では現在、10の処理区・処理場を保有しており、将来、県からの移譲も含めると11の処理区・処理場を持つことになる。これらの適切な維持管理には多額の財政負担が伴い、人口減少社会を迎える市の財政を圧迫することが想定され、今後はより効率的な事業運営が欠かせない。
《一部を処理区ごと民間委託》
このため、市が保有する施設について、管路や終末処理場を含む一部の処理区を民間事業者に委託する「包括的民間委託」を想定、今回の提案を行った。具体的な事業スキームについては今後詰めるが、ことし6月のPFI法改正では、公共施設の所有権を行政が保有したまま施設の運営権を民間事業者に認める「コンセッション方式」の導入が決まるなど、公共下水道事業に応用できる可能性のある項目が盛り込まれた。市によれば、同方式の導入により▽施設収入の早期回収(公共主体)▽資金調達の円滑化(事業者)▽金融機関の担保の安定化・投資家のリスク低下(金融機関など)▽利用者ニーズを反映した質の高い公共サービス(利用者)―といったメリットがそれぞれの立場から期待できるという。
今回、国交省が募集した支援事業は、地方自治体が実施する▽民間開発活用型▽公共施設等運営型▽包括マネジメント型―などの官民連携事業に対し、導入に必要な経費を国庫で負担するというもの。応募した34件の提案の中から同市を含む11件が選ばれた。浜松市の交付予定額は1300万円。ただ、事業化に向けた検討には国からの交付金とは別に市独自の財源も必要になるため、9月補正で必要額を計上する考えだ。
(2011/8/17)
建通新聞社 静岡支社