静岡県は、伊豆地域への温泉発電導入に向けた詳細な調査を始めた。「温泉発電事業化判断調査業務」として、4カ所の候補地で発電機の設置場所や発電量、送電や配管を含めたイニシャルコストとランニングコストを調べて採算性を検証。さらに、県(企業局)が公益事業として実施するケースのほか、源泉所有者や土地所有者の市町が事業主体となる場合も想定して実現可能性を探り、事業化の判断材料を2011年度末までにまとめる。国のエネルギー政策の方向を踏まえつつ、温泉発電を起爆剤とした地域振興の観点を考慮して早期の事業化を目指す。
県は10年度、新エネルギー導入促進策の一環として、伊豆地域の6カ所で温泉発電導入の可能性調査を実施。この結果、▽伊豆熱川駅周辺源泉(東伊豆町、想定出力342`h)▽片瀬地区民間企業所有源泉(東伊豆町、想定出力156`h)▽下田B源泉(下田市、想定出力46`h)▽南伊豆B源泉(南伊豆町、想定出力25`h)―の4カ所について「実現の可能性が高い」と判断。これを受け11年度、温泉発電候補地を精査し、採算性の詳細な検証などを行うことにした。
候補地の4カ所を対象に、@発電に利用できる温泉使用量、現在の電力需要、温泉水冷却のための水道使用量A温泉発電設備の開発の状況B温泉発電事業に対する国の補助制度や再生可能エネルギーの全量買取制度の動向C企業局が公益事業として実施するための事業形態D発電設備などの基本設計を含めた、企業局・源泉所有者・市町が温泉発電事業の実施主体となる場合の経済性―といった項目で調査検討し、事業化を判断する基礎資料をまとめる。業務を地熱技術開発(東京都中央区)が担当する。
また、この調査業務と並行して、事業化判断や経済性の評価について有識者会議(温泉発電事業検討委員会)での検討を進める。
源泉からくみ上げた温泉を利用し、アンモニア水など低沸点の液体を気化させた蒸気でタービンを回す温泉発電設備については、国内に導入実績がなく実証の段階。国の補助制度や再生可能エネルギーの全量買取制度の動向についても流動的な状況にある。これらの今後の動きと、温泉発電による伊豆地域の観光振興の観点を踏まえ、12年度以降の早期事業化を目指す。
(2011/8/1)
建通新聞社 静岡支社