「避難ビルや避難階段、標識・案内板が不足」「国による東海・東南海・南海の3連動地震の想定やこれを踏まえた県の第4次被害想定の早期策定を」「ソフト・ハード両面の対策を進めるための財政支援が必要」―。東日本大震災の巨大な津波被害を受け、地震対策先進県としてさまざまな対策に取り組んできた静岡県内でも、県民の危機感が高まっている。そこで本紙は、県内の沿岸21市町に津波対策に関する緊急アンケート調査を実施。この結果、課題として避難ビルや案内板の不足などが浮かび上がったほか、ほぼすべての市町が被害想定の早期策定・公表と対策への財政支援を求めていることが分かった(アンケート結果の詳細を25日発行の県土を守る特集」と月刊建設DATA7月号に掲載)。
アンケートは、県内の海岸線に接する21市町を対象に6月下旬に実施。土木施設などの緊急点検や5月下旬に県内各地で行われた緊急津波避難訓練で判明したソフト・ハード両面の課題や、それを踏まえた対策の方向などを文書で確認した。
静岡県と沿岸の21市町は、例年7月に行っていた緊急津波避難訓練を5月下旬に前倒しして実施。行政関係者や地元住民ら約8万4000人が参加し、避難場所や避難ルートの確認などを実践した。この結果、ソフト面の課題として挙がったのが「津波避難ビルの不足」「津波避難ビルの空白域の対策」「津波避難ビルや避難階段の標識板・案内板の不足」「(地震発生から津波到達まで5〜10分とされる東海地震の)高台避難への困難さ」「避難場所の避難者数に対応した広さの確保」「避難場所・経路での階段・昇降路などの不足」「高齢者など要援護者の避難方法・誘導」だ。
こうしたソフト・ハード両面の課題を踏まえ、静岡市や富士市、焼津市、牧之原市など7市1町が、補正予算を措置。▽津波避難ビルの新たな指定▽津波避難ビルの屋上階段への手すりの設置▽津波避難ビルの案内板の設置▽市営住宅への避難階段の設置▽自主防災組織向けの補助金の増額―などに早急に取り組む姿勢を打ち出した。
さらに、中長期的な安全・安心の確保には、国や県の支援が不可欠との認識で一致。具体策として、「国(中央防災会議)による3連動地震の被害想定や防災基本計画の早期策定」「見直しの過程で得られた科学的知見の速やかな公表」「3連動地震に対応する防潮堤・水門の施設」「津波対策のソフト・ハード両面に対する補助の拡充「避難施設や高台の整備に関する補助率の嵩上げ」「設置済みの陸閘施設の地震計連動化」などを求めている。
(2011/7/20)
建通新聞社 静岡支社