静岡県は、新エネルギー導入促進策の一環として、県と伊東市が管理する奥野ダム(伊東市鎌田)に小水力発電設備を導入する。取水塔から放水管路に流す水の力を利用した発電設備を設置する計画で、詳細設計業務を今後委託する。国庫補助事業による整備を想定しており、現段階で工事の実施時期は未定だが、県が管理するほかのダムなどへの導入も視野に事業を進める方針だ。2011年度6月補正予算案に事業費800万円を計上した。
奥野ダムは、伊東大川(松川)の洪水調節と伊東市への上水道供給を目的に、伊東大川の河口から約6`地点に県と伊東市が建設した多目的ダム。堤高63b、堤頂長323b、総貯水容量510万立方b、有効貯水容量460万立方bのロックフィルダムで、1989年に完成した。
通常、同ダムの水は、伊東市に水を供給したり下流の維持用水に流す「取水塔」のルートと、大雨などで貯水位を超えた水をダム下流に流す「常用洪水吐き」のルートの二つで処理している。
小水力発電設備の導入に当たり、常用洪水吐きに流れる水を制限し、通常時の水の流れを取水塔に集約。取水塔から流れてきた水のうち水道用の水を分離した後、ダム下流に放流する水の力を利用して発電する。川に流す水の量や水道用の水を調節するためのゲート付近にバイパス管を設け、そこに発電機を設置する。
水道用の水を除いた水量は最大で毎秒0・6立方bあり、これにより最大出力110kW(一般家庭170世帯分の使用電力)の電気を発電。管理事務所で利用する以外を東京電力に売る計画。
県は2010年度、導入可能性調査を新エネルギー財団で実施し、ここで大まかな設備の概要を固めているため、補正予算成立後に詳細設計業務を発注し、11年度中にまとめる。12年度に着工したい考えだが、国庫補助を活用する意向のため、現段階で着工時期は未定。
「ほかの施設への適用視野に検討も」
小水力発電をめぐっては、地方公共団体が行う新エネルギーの開発に対する国庫補助率が引き上げられたほか、小型の発電機器が開発され建設コストが下がっており、国も小水力発電を法令上の新エネルギーと位置付け導入を推進している。ことし3月には、発電用の水利用をすべて「特定水利使用」として国土交通大臣の許可を求めていた河川法(施行令)が改正され、水利使用の処分権者が都道府県知事の場合はその対象外となった。
県はこうした動きを踏まえ、過去に可能性調査を実施したものの、コストや関係機関との調整の困難さなどから「実現困難」と判断した県管理のダムなどに、小水力発電を導入することをあらためて検討する方針。
建通新聞社 静岡支社