東日本大震災から明らかになった防災上の諸課題を洗い出し、岐阜県の現状を総点検している岐阜県震災対策検証委員会(委員長―杉戸真太岐阜大学副学長)は20日、県庁内で第3回会合を開き=写真、各分科会で取りまとめられた提案・提言などを基に、委員会としての提言方針案を審議した。県がまとめた97項目の提言方針案のほかに、杉戸委員長から示された県特有の事情を踏まえた提言を盛り込み、今後整理し、次回第4回会合までに報告書案をとりまとめる。
分科会には耐震化分科会、原子力分科会、災害医療分科会、広域受援分科会が設けられ、これまでに分科会ごとで委員からの提案・提言などを取りまとめていた。会合では、各分科会の座長がそれぞれの提言内容などを報告したほか、事務局(県)から分科会以外で整理した提言内容などの説明があった。
提言方針は、大きく「特定災害対策」「予防対策」「応急対策」「復旧対策」の4つのカテゴリーに分けられ、特定災害対策では「広域災害」「津波・液状化対策」「原子力災害対策」の3対策について18項目の提言方針案がまとめられた。このほか予防対策では、「事業継続対策」「耐震化対策」「防災教育」「その他の予防対策」の4対策について27項目。応急対策では「医療救護対策」「広域受援対策」「その他応急対策」の3対策について48項目。復旧対策では「被災者支援対策」「その他復旧対策」の2項目で4項目の計97項目の提言方針案がまとめられている。
想定外の大規模震災に対し、主にさまざまな現行県計画の見直しが大幅に必要になるほか、県域を超えた広域連携の強化や防災関連の施設調査・耐震対策の推進のほかに、広域医療拠点の見直し、広域医療搬送拠点(SCU)の整理、原子力防災対策の組み入れや風化させない災害伝承などの教育―などを提言に盛り込んでいる。
一方、会合では、杉戸委員長がこの提言方針案97項目のほかに、県特有の事情を踏まえた提言として「地震による土砂災害対策」「亜炭廃坑の陥没の事前対策」「燃料問題」など4つの提言を盛り込むよう要請したほか、委員から県庁内の防災行政無線機器が集中する機械室が被災時に冠水し、機能不全に陥る可能性を指摘されており、事務局ではこれら意見を盛り込むかたちで今後、報告書案をまとめ、次回(7月中旬ごろ)会合で示す考え。
97項目の提言方針案のうち、建設関連の主なものは次の通り。
▽津波被害の再点検▽液状化危険度調査の見直し▽基幹交通網の耐震化推進▽堤防の液状化対策▽防災拠点施設の耐震化▽緊急輸送路沿道の特定建築物への耐震化取り組みの強化▽耐震化普及啓発の内容充実・手法の見直し▽民間木造住宅への耐震化に関する補助制度の見直し▽不特定多数が利用する特定建築物への耐震化取り組みの強化▽木造住宅の簡易的な補強など「命」を守るための多様な取り組み推進▽緊急輸送路の耐震対策▽農業用ダムの防災対策点検▽大容量送水管の強化(バックアップ化と耐震化)▽孤立集落対策(道路防災対策)▽老人福祉施設の防災体制整備(耐震診断)▽医療拠点の把握と連携(医療機関ライフラインの優先的復旧の仕組み検討)▽災害拠点病院の位置付けの明確化と機能維持(災害拠点病院の追加指定・自家発電能力調査・非常用電源設備などの整備)▽重機の配備状況把握(がれき撤去など)▽迅速な仮設住宅建設対策(建設予定地の点検など)▽迅速ながれき処理対策(県市町村災害廃棄物広域処理計画の改訂)