静岡県建設業審議会(会長・小川雄二郎富士常葉大学非常勤講師)は25日、県庁内でことし2月に続く第2回会合を開き、今後の建設産業の在り方の論点整理や対応の視点を協議した。産業界から「官と民が双方でアイデアを出し、コスト縮減や工期短縮、標準化に取り組むべき」との提案があったほか、建設産業界から「公共事業の目的を踏まえダンピングの阻止を答申に明記すべき」「雇用の受け皿として機能するよう通年発注を考えるべき」との声が上がった。
審議会では、▽建設業の特殊性▽官と民の契約の在り方▽建設産業の今後の展望―を中心に議論。
小杉昌弘委員(やまと興業社長)は、下請企業と元請企業が徹底した議論をすることで製品開発の期間短縮やコスト削減につなげている自動車産業を例に、「建設業でも官と民が双方のアイデアを出してコストダウン、工期短縮、標準化に取り組むことができないか」と提案した。
六波羅昭委員(建設業情報管理センター)は、「競争性と品質確保のため、契約の在り方にも重点を置くべき」「発注者と受注者の協議に調停人(第三者)を入れることを静岡県がモデル的に始めてはどうか」と提案。
高野伸栄委員(北海道大学大学院准教授)は、地域のニーズに合った公共事業を提案できる(自らが仕事を創り出す)建設業になるべきと提言したほか、「若年労働者の就業促進への業界全体あるいは団体の取り組みが必要」と指摘した。
建設産業界からは、村林照夫委員(県建設産業団体連合会常任理事)が、「民と民の契約での片務性を解消するための施策も考慮すべき」と述べたほか、藤本貴也委員(建設コンサルタンツ協会専務理事)が「東日本大震災を受けて公共事業の必要性があらためて見直される中、公共事業が減少し続ける前提で建設業界の在り方を探るのか」と疑問を投げ掛けた。
さらに、小野徹委員(県中小建設業協会会長)が「公共事業の品質低下につながるダンピングが“悪”だということを答申に明記すべき」「地元建設業の健全な育成を条例などで明確化すべき」、伊藤孝委員(県建設業協会会長)が「請負産業である建設業は年間を通じた仕事の計画が明確に立てられず、それが若年者を含めた雇用につながらない。雇用の受け皿としての機能も踏まえ、例えば通年の発注(発注の平準化)などを考えるべき」と提案した。
一方、酒井公夫委員(静岡鉄道社長)は、「ダンピングの増加による品質の低下や業界の疲弊は、建設以外の産業にも当てはまる。県民目線で極論すれば“業界の中で対応すべき話”だ。業界の中で取り組むべき話と、県民や行政など外部を巻き込む取り組みを分けるべき」とした。
県交通基盤部の森山誠二部長は、東日本大震災に伴う県の対応の状況などを説明し、「土木技術の想定を超えた災害が起きたことを考慮し、これまでの対策の見直しや新たな想定が必要になっている」「復旧・復興は地元の建設業者との連携があって成り立つ。地元業者の健全な育成は非常に重要な施策だ」と述べ、そうした視点を踏まえた議論を求めた。
今回の審議会での意見や提案を踏まえ、次回7月の審議会で各委員がそれぞれの分野に応じた対応策を提示することとした。9月の審議会で答申の素案をまとめる予定。
建通新聞社 静岡支社