北海道建設新聞社
2011/05/12
【北海道】筋力補助装置が震災復旧作業で活躍−札幌のベンチャー開発
復旧作業の手助けを―。北大発ベンチャー企業のスマートサポート(本社・札幌)は、試作開発中の筋力補助装置「スマートスーツ・ライト」を東日本大震災で被災した宮城県石巻市の復旧作業に取り組むボランティアスタッフに提供し、介護作業以外の新たな活用方法を模索している。ボランティアスタッフからは「一日作業した後の疲れ方が、スーツがあるのとないのとでは全然違う」との評価を得るなど、疲労軽減や腰痛予防に効果が表れているようだ。今後は製品化に向け、作業服メーカーなどの提携、販売先を探す。
スマートスーツ・ライトは、長時間にわたる中腰姿勢での作業や、腰の屈伸、重量物を持ち上げるなどの繰り返し作業により、後背部に掛かる負担や疲労を軽減するよう設計した装着型の筋力補助装置。
介護動作や工場内作業の補助、農作業従事者への活用などを想定し、技術顧問である北大大学院情報科学研究科の田中孝之准教授と共に開発。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の福祉用具実用化開発推進事業の支援も受けた。
試作品はゴム素材で製作し、動力は付いていない。胸や背中、腰、腹、太ももなどを覆ってバンドで固定し、姿勢を元に戻す力をゴムの弾性によって後押しすることで労力を軽減。また、腰に負担が掛かる姿勢や動作時の体幹を安定化させるコルセット効果も得られるという。
鈴木善人社長が「復旧作業に励むボランティアにも活用できるのでは」と考え、農業分野でつながりのあった日環エンジニアリング(本社・宮城県大崎市)にスーツを提供。同社は、ふだん有機性廃棄物の堆肥化コンサルティングを手掛けている企業だが、東日本大震災発生後は被災住宅の片付け作業など、宮城県石巻市大街道地区で生活復旧支援のボランティア活動を展開した。
スーツを着用した社員からは、ゴムによる締め付けの強さや装着部分のこすれを指摘する声もあったが、「翌日に残る疲れが全然違う」など、その有効性を評価する意見が大半を占めた。
鈴木社長は「介護や農業、工場での作業のほか、運送業、建設関連業など、腰回りに負担が掛かる作業は全てが対象となるため、潜在的なニーズはかなりありそう」と手応えを感じていて、「作業服の上から着けるだけではなく、服の中に組み込むこともできる」との展開も構想している。
今後は「小さな企業で製作すると単価が高くなり、作る数も限られる。提携できるメーカーや販売先を見つけて技術提供し、早期の製品化を目指したい」と話している。