建通新聞社(神奈川)
2011/05/10
【神奈川】横浜市民病院、建て替えで5案
横浜市は、市民病院(保土ケ谷区岡沢町56)の老朽化対策として、五つの建て替え案を明らかにした=表参照。隣地取得による現在地建て替えや移転などを想定。建設費は最低で約128億円、最高で304億円に上ると試算している。市では、市立病院経営委員会(委員長・田中滋慶應義塾大学大学院教授)が今夏にまとめる答申を基本に、具体的な検討を進める。
建て替え案は、新病棟の規模を総延べ5万1000平方b(1病床当たり78・5平方b、650床)とする、1月にまとめた将来構想に基づき、@現在の敷地内A約2000平方bの隣地取得B約5000平方bの隣地取得C約1万平方bの隣地取得D移転(約2万6000平方b)―のケースによる建て替えを想定し、シミュレーションを行った。
@は現在の敷地だけを使って建て替える案で、容積率を緩和した上で、7階建ての病棟2棟を建設する。既存棟での診療と新設を並行するため、診療を維持しながら建て替えるのは事実上不可能となる。入院収益の減収などで、経営への影響が321億円に上るとされ、現時点では最も課題の多い案となっている。
A〜Cの隣地取得による建て替え案は、取得面積が大きくなるほど工事中の病院機能の低下が少なく、余裕を持った建て替えが可能になるが、その分、取得費用がかさむ。AとCは病棟2棟、Bは3棟を建設する。
Dの案は、用地取得の費用に52億円を見込むが、完成を待っての移転となるため、病院機能への影響がない利点がある。
市民病院側では、地域の医療計画や市の医療施策の観点から、現在地を基にした建て替えを希望している。ただ、病院周辺の土地をどれだけ取得できるかめどが立っておらず、現在地で医療を続けながらの建設は技術的な困難が伴う。
また、建て替えに際しては医療機器の更新などが必要。建設費と土地購入費のほかに数十億〜100億円の費用が掛かる見込みで、巨額の事業費の確保も課題となる。
同病院は1960年の開設以来、増築や改修を繰り返しているが、初期の建物は老朽化が著しく、2009年に設置した市立病院経営委員会で対策の議論を進めている。
市は5月の組織再編で、健康福祉局の中に医療政策室を新設。今後、同部署が委員会の答申を基に、市全体の医療計画と合わせた具体策を検討する。