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建通新聞社(神奈川)
2011/05/10

【神奈川】予定価格、県内9市町で事前公表

 本紙調査によると、神奈川県と県内33市町村のうち9市町の入札で依然として予定価格を事前に公表していることが分かった(事後公表試行中を含む)。行政による指し値≠ニも言える予定価格の事前公表案件では、最低制限価格付近に入札価格が集中したり、くじ引きで落札者が決まるケースが増え、適正な競争環境が確保されているとは言い難い。事前公表についてはこれまで、国土交通省と総務省が都道府県などに「取りやめるべき」と通知しており、地域の雇用の確保や建設業の健全な発展の観点からも、見直しが求められている。
 予定価格を事前に公表している自治体は、予定価格を職員に聞き出すなど「不正行為の防止」を主な理由にしている。また、入札の透明性の確保や事務の簡略化を挙げるところもある。ただし、応札者を広く募る一般競争入札で予定価格を事前公表すれば、落札額の推察が容易になり、積算能力の伴わない不適格業者の落札の機会が増える。その結果、積算能力があり、適正価格を積算した業者の落札機会が減少することになり、競争性や品質の確保の観点からも疑問が残る。
 これまで事前公表を原則としていた川崎市では、2009年4月〜11年2月の約2年間、業種別・ランク別の入札で半分ずつ事後公表を試行し、事前公表の弊害と言われる事柄について検証した。また、建設業者15団体と入札参加業者388社にアンケート調査を行った(10団体と143社から回答)。結果から、落札率で大きな差はなかったものの、事前公表案件で同額によるくじ引きでの落札者決定が多く発生し、適正な競争が阻害されていることが分かった。
 さらに、建設業者の積算努力を損なわせることも考えられ、談合がいっそう容易に行われる可能性があることから、11年度に入札制度を見直し、工事契約の入札で事前公表を行わないこととした。
 このほか、横須賀市も試行結果などを踏まえ、10年度に事後公表に移行した。横浜市など、予定価格の事後公表を試行し、検証を進めている自治体もある。今後、事前公表の在り方に加え、地元建設業の採算性を視野に入れた最低制限価格の設定などの検討が求められそうだ。