建通新聞社(神奈川)
2011/05/02
【神奈川】横浜市 公共施設の保全改修にPPP活用が必要
横浜市は、みずほ証券と共同研究による「公共施設・インフラの改修、維持保全へのPPP(Public Private Partnership/公民連携)導入に向けた共同研究報告書」をまとめた。PPPについて、公有財産の有効活用や保全費の捻出(ねんしゅつ)、民間との連携、国内外の活用状況などの幅広い観点から研究。PPPの導入に向けた課題を検討した。これまでに策定した「横浜市公共施設の保全・利活用基本方針」と「横浜市資産活用基本方針」でも、民間のノウハウ・資金の活用や、公民連携による土地活用の必要性が示しており、今後、PPPの手法を使った保全・改修を具体化する方針だ。
今回の報告書では、2028年度までの保全修繕費の推計と中期的な財政の見通し、財政健全化の取り組みなどを総合的に検討。これらの数値を踏まえた上で、財政負担の軽減と効率的な保全・改修を可能にするには「PPPの活用が必要」との方向性を示した。
ただし、横浜市を含めた国内のPPPの事例は、PFIを中心に施設の新設に対するものがほとんどで、既存施設の保全・改修への導入は極めて少ない。こうしたことから、アフェルマージュ方式(民間が行政施設などを使って公共サービスを提供。改修は行政が負担)やコンセッション方式(民間が行政から事業運営を取得し、改修投資なども合わせて全面的にサービスを提供)など、海外の事例を含めたさまざまなPPP手法を研究。施設の所有権や資金調達、事業への関与の度合いなどで、官民のバランスをどう設定するのかを勘案して、最適なPPP手法を選択することが重要とした。
今回の共同研究は、市が民間企業からの相談・提案を受ける窓口「共創フロント」にみずほ証券が提案したことがきっかけ。以後、11年1月から3回の研究会を開き、議論してきた。具体的な事業を想定したものではないが、今後、PPPを円滑に導入する際のたたき台として位置付けている。
公共施設政策と財政統括する「財政局」発足(中見出し)
市の公共施設・インフラの保全費は06〜10年度は年間約1100億円で推移しているが、今後、昭和40年代の人口急増期に整備されたものが老朽化する11〜28年度の平均は年間約1500億円に上る見通し。これに対する財政状況は、大幅な不足が見込まれている。
一方、市では財政の健全化に取り組んでおり、「中期4か年計画」(10〜13年度)の中で12年度以降、市債発行を対前年度比5%減とする目標を掲示。必要な改修と財政の再建が課題となっている。
市では、5月の組織再編で、公共施設の政策と財政・財務を統括する「財政局」を発足しており、今後、同局が中心になって、公共施設の保全・改修や利活用について、具体的な施策を検討する。