北海道建設新聞社
2011/03/17
【北海道】津波被害のセメント輸送中継拠点、復旧進み出荷再開の兆し
11日に発生した東日本大震災の影響で、道内のセメント業界も被害を受けた。大きな津波が押し寄せた苫小牧や釧路では、輸送の中継拠点となるサービスステーション(SS)が冠水したため、やむなく出荷機能を停止した所も少なくない。しかし、被害を受けたSSでは、スタッフが全力で復旧作業を進めるなど、15日から再開の兆しが出始めた。道内の生コン工場や資材商社向けの出荷は、正常に戻りつつある。
道内10地域にSS網を持つ太平洋セメント(本社・東京)は、北斗市内にある上磯工場が海上輸送を遮断された。施設の破損は無かったため、津波後の航路ブイや海水の深さを点検し、15日夜から桟橋を使った船積み出荷を再開した。地元をカバーする陸上出荷はバラ、袋とも稼働していたため、全ての供給体制が回復したことになる。
SSは新釧路と苫小牧、広尾の3カ所が被害を受けた。新釧路は全品種の出荷が可能だが、セメント受け入れ設備が冠水したため、装置の分解や清掃作業に追われている。サイロに十分な在庫が残っていることから、事業者のオーダーには問題なく対応できるという。苫小牧も同様の被害を受けたが16日朝に復旧し、受け入れ、出荷とも機能している。
一方、浸水によるダメージが多岐にわたっている広尾SSは、受け入れ、出荷とも復旧に2―3週間ほどかかるとみている。
日鉄セメント(本社・室蘭)は、安全確認のため室蘭工場を11日に休止し、翌12日に再開した。道内に7カ所あるSSのうち、釧路と十勝港が冠水被害を受けたが、復旧作業を進めて14日午後5時に出荷を再開。現在は通常通りに操業している。
宇部三菱セメント(本社・東京)は、釧路SSが大津波警報が発令された11日から操業をストップしていたものの、警報が解除された14日に業務を再開した。施設の影響は出ていないという。
苫小牧にSSを持つ住友大阪セメント(本社・東京)も警報を受けて12日まで休業を強いられたが、14日から再稼働している。一方、電気化学工業(同)の苫小牧SSは浸水被害を受け、15日現在で操業が止まったまま。一部装置の部品を交換する必要があるが、輸送が混乱していることもあり、復旧のめどは立っていないという。
宇部三菱と住友大阪、電化の3メーカーは、道内にセメント工場を持たず、供給は東北地方にある工場から受けている。住友大阪は、グループの八戸セメント(本社・青森県八戸市)八戸工場が停電で操業を休止。新潟県糸魚川市にある電化の青海工場も東北電力による計画停電を受け、自家発電を活用するなどで影響を最小限にとどめるよう対応している。
青森県東通村に位置し、宇部三菱にセメントを供給する三菱マテリアル(本社・東京)の青森工場も計画停電の影響を受けたが、4月2日までプラントの定期修理に入っていることもあり、地震による直接的な出荷影響はないという。
今後の需給動向については、先行きの不透明感を強く表すものの、「事業量の減少で各プラントとも稼働率を抑えて生産していることもあり、余力は十分。需給がひっ迫することはない」(関係者)とみている。