静岡県は2011年度入札・契約制度の改善策として、「静岡県建設工事請負契約約款」を改正する。今回の改正では、請負企業の役員が暴力団員であった場合における発注者の契約解除権を明確化。他にも、@工期延長に伴う発注者の増加費用負担の明確化A甲・乙の呼称の変更−を盛り込んでいる。今後、規則などの改正に進めた上で、4月1日から適用する予定。
前号に引き続き、県の入札・契約制度の改善として、暴力団排除への取り組み強化や建設関連業務のダンピング対策などを紹介する。
【静岡県の2011年度入札・契約制度改善策=B建設工事請負契約約款の改正】
現行の請負契約約款の中では、契約解除の条項として、@正当な理由なく期日を過ぎても工事に着手しないA帰責事由(故意・過失)により工期内に完成しない、または工期経過後相当の期間内に工事を完成する見込みが明らかにないB現場代理人を設置しないC契約に違反し、契約の目的が達成されないD契約の解除を申し出た(設計図書の変更に伴い請負代金額が3分の2以上減少したケースを除く)−の各ケースに該当した場合に、発注者は契約を解除できると規定している。
今回の約款改正では、公共工事から暴力団の関与を排除するため、発注者が契約を解除できるケースに「受注者の役員等が暴力団員である場合」を新たに追加。落札決定して工事契約を交わした後、暴力団員や暴力団関係者の関与が発覚した時点でも、排除可能な体制が確立されるよう約款に明記される見通し。
県では、すでに県発注工事の受注者が暴力団などから契約履行にかかわる不当要求や妨害などを受けた際に、発注機関への通報・報告を義務付けている(不当介入に対する措置)。暴力団排除を徹底することで、契約の透明性や施工品質の確保、不当介入の防止などを図る考えだ。
《工期延長に伴う発注者の費用負担も明記》
また、工期の延長に伴う増加費用の負担についても約款に明記。着工前に用地確保が完了しないために、工期変更を余儀なくされるケースなど「発注者に帰責事由がある場合」には、受注者の損害に対して発注者が費用を負担することを明確化する。
現行の約款では、発注者を「甲」、請負者を「乙」と呼称しているが、発注者が受注者に優位するとの印象を与えているおそれがあるため、甲を「発注者」、乙を「受注者」に変更する。
県では、建設関連業務委託の契約約款でも、同様の改正を予定。静岡県暴力団排除条例が施行される8月までに改正を実施する考えだ。
今回の県建設工事請負契約約款の改正は、昨年8月に中央建設業審議会が建設業の契約・取引の対等化、明確化を図る観点から標準請負契約約款を改正したことに呼応したもの。中建審の改正事項の中には、今回の県の見直しと同様の改正事項が盛り込まれている。
建通新聞社 静岡支社