北海道建設新聞社
2011/02/22
【北海道】土を使った野菜工場、ICTを活用して連作障害を克服
TW北海道(本社・岩見沢)は、土を使った太陽光利用型の植物工場を開発した。国内にある植物工場のほとんどが水耕栽培を採用する中、ICT(情報通信技術)を活用した生育環境のコントロールにより、土耕でネックとされる連作障害が起きにくい仕組みを生み出した。「TWシステム21」の名称で昨年から販売。建設コンサルタントのドボク管理(同・北見)が購入し、今春から導入する。純″農業の新しい形として注目を集めそうだ。
TW北海道は、農業生産法人の「NOWA(ノア)そらち」から独立し、2008年に設立。研究開発やシステム販売を手掛けている。NOWAは、07―09年に農林水産省から補助採択を受け、ITを活用した営農や植物工場の普及に関する研究を進めてきた。
太陽光を利用した植物工場の中で、もみ殻と土を混ぜた土壌にホウレンソウを栽培している。温度や湿度、土壌水分など生育に重要な施設内のデータはICTによりパソコンでコントロール。カメラで葉の色や面積を一枚ずつ確認しながら、部分的に肥料を与える作業も全て自動化している。
太陽光を利用するため、日射量の管理にも余念がない。ホウレンソウは、日照時間が長くなると花を咲かせるため、反射カーテンで自動開閉して調整。冬場など日照時間が少なくなるときは、1棟で72個用意している高圧ナトリウムランプが太陽光の代わりをする。
ランプによるエネルギーの7割が熱源に変わるため、ハウス内の気温を高くできるほか、ランプからの熱を地下に送風することで地温を上げる効果もあるという。ハウスでは土壌を高さ600_に盛り上げ、そこに地温調整用の送風管を通している。冬場は地中に電熱線を埋め、土の温度が下がらないようにしている。
機器類は照明や電気設備などを手掛ける大手の総合電機メーカー、センサーは制御機器や電子部品で独自の技術力を持つ大手メーカーがそれぞれ開発協力している。最近は大手の繊維会社と協力し、ホウレンソウを使ったジュースも市販化した。
植物工場は、連作による土壌の環境変化で次第に生育が悪くなる「連作障害」を嫌い、水耕栽培するケースが大半を占める。このシステムでは、もみ殻を土壌に半分入れることで空隙を作り、土壌中のCO?濃度を下げながら酸素濃度が高くなるよう工夫。さらにICTを活用した施肥管理や有機物肥料と合わせ、連作障害を起こすことなく、年間8―9回の収穫を可能にした。
丹精込めて育てたホウレンソウのミネラル成分値は、国の食品成分表の1・88倍。「半端な数値だけど、イイハッパ≠もじって狙ってます」と宮本圭一社長。都内の高級スーパーで5割増しの値段で売られるなど、その食味にお墨付きをもらえるようになった。
システムは高圧ランプの付いたタイプで1000万円、ないのは700―800万円に設定している。1棟当たりのランニングコストは1回の収穫ごとで5万円。初期投資と運転管理費ともに抑えられ、植物工場の高額イメージを根底から覆す。スタッフ1人でハウス5棟を管理できる仕組みを目指し、人件費も大幅に抑える。
宮本社長は「ITはあくまで補佐の役割。これまでのように勘を頼りにしたやり方ではなく、データを積み重ねてプログラム化することで農業の垣根はぐっと低くなる。システムはまだ改良の余地があり、一緒にリスクを負ってくれるぐらいの気構えを持った協力者が増えてくれれば」と話す。