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北海道建設新聞社
2010/12/22

【北海道】大学の「知恵」を地域に還元−伝道者は工務店 

 大学が持つ情報や知的財産などの「知恵」を地域の活性化に役立てていこうと、学識者や研究者、設計士、建築業者で立ち上げた北海道トップランナーネットワーク構築会議(TRNC)が、積極的な活動を展開している。住民のインフラを支える工務店を「知恵」の伝道者とし、研修会を通じてさまざまな知識を啓もう。専門委員を建築だけでなく法律、教育などの幅広い分野から招き、研修会を通じた「知恵」の地域還元ネットワークづくりを進めている。
 同会議は、道立北方建築総合研究所の福島明氏、室蘭工大工学研究科の山田深氏、拓建築設計事務所の天谷一男社長、住宅夢工房の阿部章三社長が発起人となり、2010年4月に発足。会員は札幌、旭川、室蘭、帯広の工務店など6社を数える。
 地域経済の活性化には、情報が地域に公開され、住民、行政、産業界、学識を循環させることが重要と認識。情報が「知恵」として地域に還元できるシステム構築を目指している。
 普及の役割を担うのは、住宅の受注、提案、メンテナンスなど、住生活の一端を支える工務店。景気や住宅着工戸数の低迷で、継続的な技能向上が課題となっている工務店を核に、「知恵」のネットワーク化で地域の活性化に貢献する。
 活動は@市民セミナーや技術セミナーなど、高性能住宅に関する意識を変える啓もう、生活者への情報発信A既存制度も積極的に活用して、地域工務店が高性能住宅を建設できるような資格者による熱計算や気密測定、北方型住宅サーポートシステムでの記録保存などB生活者と作り手が一緒に家造りを行うための生活者相談窓口の設置Cメンテナンス手法の啓発D会員工務店と専門委員会との製品開発、その普及―など7項目に上る。
 専門委員として、建築温熱環境工学分野で北大名誉教授の絵内正道氏、建築空間デザイン分野で室工大の山田氏、建築環境システム分野で札幌市立大大学院デザイン研究科の斉藤雅也氏、エネルギー利用分野で北電総合研究所の小笠原一隆氏が参画した。このほか教育、医学、法律分野からも各専門家を招き、建築技術だけでなく、多面的な情報ネットワークとする。
 ことしは6回のセミナーを開催。また、同会議内にパッシブ換気システム実践会を設け、鱠日に第1回研修会を開いた。パッシブ換気システムをベースに床下空調システムを用いた札幌市内の一般住宅を会場として利用。大学や研究機関、工務店など道内各地から鳬人が集まった。
 同システムを提唱する絵内氏と福島氏、事務局の天谷氏が講師となり、換気の基礎理論から現場対応までを解説。「自分たちが理解するだけでなく、現場の職人になぜ、そうした施工(作業)が必要なのかを伝えないと思わぬ施工不良が起こり、本来の性能が発揮できなくなる」など、パッシブ換気に不可欠な機密性を確保するためのアドバイスをしたほか、会員同士で率直に取り組みを報告し合った。
 天谷氏は「会に入ればパッシブ施工や受注が可能になるのではない。一定の知識や実績がある工務店とともにレベルアップを図りたい」と会の趣旨を説明。意欲のある会員を求めている。