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北海道建設新聞社
2010/12/10

【北海道】左官職人の6割が55歳以上−危機感共有しビジョン作りへ 

 道内の左官職人の6割が55歳以上。このまま推移すると、10年後には現在の4割に減少する―。北海道左官業組合連合会青年部のまとめで、こんな実情が浮き彫りになった。青年部の中屋敷剛部長(中屋敷左官工業社長)は「層の厚い55―64歳世代がいなくなると、左官業界だけでなく建設業全体の生産性にも影響が出る」と危機感を募らせる。一方、「この現実をみんなで共有できた意義は大きい。しかし行動が伴わなければ、何も理解していないのと同じ」とし、技術水準の向上をはじめ、受注構造の変革、左官技術のPRなど、次代を見据えた対応策の実践を打ち出す。

 ■5年程度で影響も
 年齢層の把握は今回が初めて。青年部が活動の柱として取り組む「10年ビジョン作成」の一環で、北左連の会員企業が対象。
 まとめによると、国民健康保険に加入している左官職人は2073人で平均年齢54・8歳。15歳から74歳までを5歳間隔で区切り年齢層を見ると、55―59歳(456人)、60―64歳(417人)が突出。この2つの世代だけで全体の4割を超え、55―74歳では1234人と全体の6割を占めることが明らかになった。また、50歳以上と比べると、49歳以下が極端に少ないことも分かった。
 「以前から職人の高齢化が問題視され、将来大変になるという声もたくさん出されていたが、どこか抽象的で危機感も薄い状況だった」と現状把握の意義を話す中屋敷部長。今回の結果を受けて、「55歳以上のほとんどが10年後にはいなくなり、残るのは4割になることがはっきりした」と強調する。
 今後、工事量が減少傾向にあるといった要因を考慮しても、「6割の職人が急激にいなくなるのは、建設業にとっては大きなショックとなる」と断言。60―64歳の世代が業界を去るこの5年ぐらいで影響が出てくるだろうと話す。
 ■対応できない事態
 中屋敷部長が、8月の就任時に掲げた「10年ビジョン」は、左官業界の10年後の未来図≠描き、目標とする未来図≠実現させるために、やるべきことを実践していく施策。業界が抱える職人の数、年齢層の把握は、ビジョンづくりの前提となる。
 抽出したデータはすでに、旭川と帯広で開かれた青年部の幹事会などで報告。55歳以上の職人が、ここ20―30年間の業界を支えてきたことを伝えるとともに、近い将来直面する状況を示し、「何かをしなければならない」という認識を共有した。
 現状把握に続く行動(実践)―。中屋敷部長は「ただ大変だと言っているだけでは前に進まないし、何も変わらない」とし、幾つかの施策を繰り広げる方針を掲げる。
 特に力を入れるのが、若手職人の技術水準の向上だ。「業界全体で取り組まねばならない。技術の伝承を含めた技術向上を図らないと、業界の発展にはつながらないばかりか、ニーズにも対応できない事態にもなりかねない」と懸念する。
 来年3月、札幌で予定している技術研修会では、全国を舞台に活躍するカリスマ左官≠講師に招き、現代工法による磨きや漆喰(しっくい)の技術を学ぶ。一般公開も考えており、左官の技術を広くアピールする狙いもあるという。
 ■横のつながり強化
 重層構造の見直しも必要になると先を見据える中屋敷部長。具体的には、業界内の2―3次下請けといった上下関係の受注形態から、横のつながりを強化する体制に改め、「1社1社がお互いに支え合う、アメーバ的運営を目指していく」と言う。
 その背景には、仕事量の減少で個々の会社が多くの職人を抱えることが困難になっている実情が横たわる。一方、規模の大きい現場ではどうしても30―40人といった職人が求められてくるケースにあるため、その対応策として「経営者が目的や価値観を共有し、職人が同じ技術水準を持つことで、1社でたくさんの職人を抱えなくても対応でき、元請けにとっても安心感につながるはず」と力を込める。
 1年をかけて取り組むビジョンづくりだが、「1年後には具体的に動いているようにしたい」とし、「方針は既に固まった。できるものについては、どんどん取り組んでいく」と、10年後を見据えた施策の実践を強調する。