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日刊建設タイムズ社
2010/10/26

【千葉】「梯子乗り」などの伝統文化を披露/千葉県鳶工業会が 毎年恒例の老人福祉施設「慰問事業」で

 (社)千葉県鳶工業会(地曳岩夫会長)の老人福祉施設を対象とする「福祉対策委員会慰問事業」が24日、東金市内の2施設で行われ、県内各支部から会員約80人が参加。施設利用者や周辺住民に対して、日本が誇る「纏振り」「梯子乗り」「木遣り」という鳶の伝統文化を披露した。
提供:日刊建設タイムズ
 











この日は、午前にグリーンケアヴィレッジ梶i石原孝雄会長)の運営する小規模多機能型居宅介護サービス及び通所介護サービス施設「東金なごみ館」(東金市田間757−1)、午後は、社会福祉法人ゆりの木会(浅井邦彦理事長)が運営する特別養護老人ホーム「ゆりの木苑」(東金市家徳756−2)を慰問し、伝統文化の披露とともに「染め手拭い」などの慰問品を贈呈。
 千葉県鳶伝統文化振興会・千葉県連合若鳶会が共催し、社会貢献活動を通じた建設業イメージアップ事業として、CCIちば(千葉県魅力ある建設事業推進協議会)が協力した。
 午前の演技に先立ち、主催者を代表して石宏・副会長(会長代行)は、「赤半纏を着ているのが親会の親鳶、青半纏を着ているのが若会の若鳶で、本日は若鳶たちが演技を披露する」と紹介したうえで、「本日披露する木遣り、纏振り、梯子乗りには、江戸時代から続く伝統がある。時間の許す限り、ゆっくりとご覧頂きたい」と述べ、あいさつとした。
 次いで、来賓として東金市役所高齢者支援課の布施利晃課長が、「揃いの半纏姿の皆さんを拝見していると『粋』という言葉がぴったりで、『これが日本なんだな』と思う」と述べたうえで、「本日披露される『木遣り』には、無病息災や家内安全をもたらす神通力があると聞く。これらの日本の伝統文化を目の当たりに出来ることは、私自身も楽しみである。高度な技術に加え、長い経験と歴史を持った伝統芸能を披露して頂けることに、改めて感謝申し上げたい」とし、あいさつに代えた。
 引き続き、施設を代表して石原会長は、「建設業における景気はだいぶ下回っていると聞くとともに、精神的な日本の弱体化として、これまでの伝統がどこかに行ってしまった気がする」と感嘆した一方で、「その最中に、皆さんの活躍をこの当地で観させて頂くことは、本当の意味での日本の復活として、『これが日本だよね』と言えることだと思う。是非とも、これらの演技を一人でも多くの田間地区の皆さんにご覧頂きたい」と述べ、あいさつを結んだ。
 (社)千葉県鳶工業会では、鳶の伝統文化である「纏振り」「梯子乗り」「木遣り」などの誇れる技を、千葉県鳶伝統文化振興会・千葉県連合若鳶会(岩城徳太郎会長)が中心となり研修会を開き、継承に心掛けた研鑽を積んでいる。
 この伝統文化を活用し、希薄しつつある「助け合い」という人間関係の大切さを改めて見直すとともに、「一つの目的のために協力し、達成するものを得る」ことを会員各自が認識するため、老人福祉施設を訪問して披露し、人との交流を通じて鳶職の社会的地位の向上を図るというもの。
 これらの老人福祉施設を対象とした慰問活動は、県内各地で以前から行われてきたが、県鳶工業会が社団法人化した1996年からは、組織として毎年実施。この日と同様、1日に2施設を回り、鳶の伝統文化を通じてお年寄りに元気を送ってきた。
 この日の演技は、親鳶による木遣りに合わせて、若鳶が纏振りで練り歩いた後、梯子乗りを披露。梯子乗りに使う「竹梯子」は高さが6.3mで、伝統文化・技能の継承として研修を行う、自らの千葉県鳶伝統文化振興会・千葉県連合若鳶会で作製した。
 梯子の乗り手は、順に伊藤勝己(船橋支部)、菅谷英治(同)、高橋哲之(同)、寺田和弘(同)、長妻勇太(柏支部)、早川繁幸(市川支部)、在原慎太郎(市原支部)の若鳶7人。
 梯子乗りで披露した主な技は「遠見」「枕かんたん」「腕溜め」「唐傘」「腹亀」「背亀」「八双」「鯱」「吹き騙し」「下がり藤」「谷覗き」「逆裏止め」など延べ30種類余で、各人が3〜6つの技を演技して競い合った。
 これらの技について千葉県連合若鳶会の岩城会長は、「このうち『遠見』は、出動して火の手が見つからなかった時に、火の見櫓の代わりに梯子を立て、遠くの火事場を探したのが始まりとされ、千葉県では、必ずこの技を披露するのが伝統。一本の竹の上にいるので一本遠見。その他にも二本遠見、つま掛け遠見、達磨遠見、狐遠見、途中遠見など、遠見だけでも10種類ぐらいの技がある」という。
 さらに氏は、技の数について「全国にこういった組合があり、我々が見たこともない技も沢山あると聞く。また、他人とは違う常に新しい技を作る人のほか、『自分にしか出来ないだろう』という腕自慢の鳶もいることから、梯子乗りは常に新しく、奥が深く、面白い」と話す。
 一方、前述の通り、木遣りには「無病息災や家内安全をもたらす神通力がある」とされることから、県鳶工業会では毎年1月4日の「仕事始め」に県庁を訪れ、新年関係官庁あいさつ廻りとして、木遣りを披露。
 知事室をはじめ総務部、商工労働部、県土整備部などを廻り、その後、千葉労働局や建災防、ちば仕事プラザなどに出向き、県の発展と安全を祈願している。
 県鳶工業会ではこれらのボランティア活動の意義として、「鳶社会のみならず、広い視野に立ち社会に貢献することは、社会の根幹である建設業に携わる者の義務であり、将来の鳶業界のためにも繋がるものと信じる」とし、一人でも多くの会員の参加を呼びかけている。bana2